野生動物や自然を相手にするので、警戒させたり怯えさせないように、細心の気配りが必要です。
【シロアジサシのペア】いつも仲むつまじいシロアジサシ。見ているこちらがあてられっぱなしだ。グリーンの背景を活かし幸せいっぱいを表現したかった。
■カメラ:ニコンF5 レンズ:300mm F2.8 フィルム:ベルビア プラス1増感 絞り:f4 絞り優先オート プラス2/3補正 三脚使用 撮影地:アメリカミッドウエイ

───警戒心が強い野生動物なのに、かなり近づいて撮影されていますが、特別な方法があるのですか?

 動物の表情をアップで撮るときは、「ダルマさんが転んだ」みたいに少しずつ少しずつ近づいていきます。心の中で”自己紹介“をしながら動物に近づいていくと、向こうも徐々に慣れてきます。
 無理に近づいたりすると、驚いてその場所にはもう現れないばかりか、その周辺からまったく姿を消してしまうこともあります。
 だから、リモコンを使って撮る場合でも、シャッター音に慣れさせるために、本番前にシャッターを何度も押します。はじめはビックリしてすぐに隠れてしまいますが、何度も繰り返しているうちに、動物が音を気にしなくなります。そこで初めて本番の撮影に入るのです。
 実はいつもいつもこちらの思惑通りにいく訳ではなく、失敗もかなりありました。でも、そのことも撮影の楽しみのひとつです。「駆け引き」とも少し違いますが、レンズを通して動物たちと「コミュニケーション」をとることを心掛けています。あまり意気込んで撮影に臨んでもいい結果にならないんです。のんびりゆったりとしながら撮っています。


【キタキツネの親子】春先偶然見つけたキツネの親子。20日間ほどをここで過ごした。警戒心が強くなかなか撮影できなかったが最後にはリラックスした姿を見せてくれた。
■カメラ:ニコン F5 レンズ:500mm F4 フィルム:ベルビア プラス1増感 絞り:f4 絞り優先オート 三脚使用 撮影地:北海道湧洞沼


北海道の知床で、ヒグマに遭遇した時は「死」を覚悟しました。

───長年、北海道で撮影をされていますが、国内の他の地域では撮影は行わないのでしょうか?

 長野の地獄谷に野生の猿がいることは知られていますが、その猿がとても面白くて四季を通して5年近く通っています。ここの猿は温泉に入ることで有名ですが、野生なので夕方には山に帰り、山で暮し、朝になると温泉に入りに来ます。猿の暮しにはたくさんのドラマがあるんです。
 それを追いつづけてみようと思ったきっかけは、群れのリーダーに「虎七」という大きな猿がいるのですが、たまたま私が山の中で木に寄りかかって写真を撮っていたら、その虎七が私に近づいてきて、いきなり背中を思いっきり叩かれたことがありました。
 その頃はそれがボス猿の虎七とは知らなかったので、「何だこの猿は」と思っていたら、その後、私が寄りかかっていた木に虎七が寄りかかって昼寝を始めたのです。これは面白いと思い、この猿たちの暮しを追いかけてみようと思い撮りつづけました。



【トラシチ】僕が追いかけている群れの第1位のサル。猛烈な大雪に疲れたのか雪壁の端でボーっとしていた。背景の大雪の後を入れて撮影。
■カメラ:キヤノンEOS10D レンズ:16-35mm F2,8 ズーム RAW 太陽光モード ISO100 マニュアル 絞り:f5.6 シャッタースピード:1/320秒 撮影地:長野県地獄谷 ニホンザル

 当サイトに掲載されている写真・テキスト等を無断で複製・転載することを禁じます。