今まではフィルムとデジタルの比較みたいなことが言われてきましたが、その比較には意味が無いように思えます。デジタルでも十分きれいに撮れますし、隅々までしっかりと写すことができる。だけど、そのことをちゃんと理解して撮っていない人が多く、ブレていたりピントがボケていたりしている写真が目に付きます。それが原因で「デジタルってきれいに写らない」と思い込んでいる人もいます。
だから私が審査委員をしているフォトコンテストでも、被写体をよくとらえてはいるが、基本的な設定を間違えていたり、ちょっとブレていたりとか。ちゃんと使えばきれいに写せるのにと、残念に思う作品が結構あります。たとえコンパクトデジタルカメラでも4×5のカメラで撮っている意識で注意深く撮れば、4×5で撮ったようにきれいに写るものです。
今までの35ミリフィルムの場合は、撮影の小さなミスは粒子の中に埋もれていました。デジタルの場合はついつい気軽に撮ってしまいがちですが、それらが全部でてくるくらい、すごくよく写ることを知って、ちゃんと撮る。だから手持ちじゃなくて三脚を使う。絞りもある程度絞って撮る。しかし、絞り過ぎちゃいけないとか、様々なデジタルならではの特性を知って、使いこなすことがこれからは必要です。
デジタル一眼レフカメラを持っていても、コンパクトデジタルカメラからステップアップした人は、プログラムオートだけで撮る。これではダメです。せっかくデジタル一眼レフカメラを持っているのだから、しっかりした三脚を使い、レリーズも使って撮るべきです。ピントはオートの方がいいと思いますが、色温度の設定、シャッタースピード、絞りなどは、きちんとマニュアルで撮ることを実践していただきたい。
――デジタルカメラの普及で、写真の世界の垣根が低くなったように思えますが?
写真を楽しむ人が増えていると思います。そして、上達するスピードが早くなっています。撮影で失敗することが少なくなったから、撮るのが楽しいですよね。デジタルカメラなら、小さなサイズのモニターであっても、撮影直後に両目で見ることができる。これはすごくいいことです。両目で見れば自分の撮りたいもの、撮りたい世界を自分で的確に確認することもできます。
さらに、カメラやレンズにブレ防止機能が付いていますので、誰でもがいい写真をミスすることなく楽しく撮れるようになりました。だからといって油断はしちゃいけないんですが、楽しく撮れるということは大事です。
また、デジタルカメラは小さな被写体などでもものすごくきれいに写ります。以前だとマクロレンズを持っていないと撮れなかったものが、今はコンパクトタイプのデジカメでも撮ることができます。 |
【落日】初めて行った宍道湖で見事な落日に出会った幸運。みるみる沈みゆく太陽を追って、あわてず落ち着いて!と自分に言い聞かせて構図を決めた。太陽が画面にある時は露出が難しい。空の部分をスポットで測って1/2〜1段アンダーにする。オートよりマニュアルで撮るといい。また、ブラケットで露出をふるのも忘れずに。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ レンズ:400mm 絞り:f16 シャッタースピード:1/15秒 フィルム:プロビア 撮影地:島根県松江市袖師が浦 |
【吉野川上流】黄色い葉っぱと神秘的な青い水の色のコントラストをねらった。落ちたばかりの葉には油分があって表面張力があるのか、きれいに浮かんでいる。ブレないように流れのないところに浮かべて撮った。水の紋様を写すため、シャッタースピードは速いのを選んだ。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:45-85mmZOOM 絞り:f11 シャッタースピード:オート フィルム:プロビア 撮影地:吉野川 |
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