4月も下旬というのに、ここは春を迎えたばかり。土曜の午後、一両の列車から降りた学生たちは、麗らかな早春を楽しむようにゆっくりと家路に向かって行った。
■カメラ:ニコンFM2 レンズ:ニッコール35mm F2.8 絞り:f5.6 シャッタースピード:1/125 フィルム:Fuji
RDP・ 撮影地:新潟県中魚沼郡津南町(撮影当時) 足滝駅 4月 |
「長野にいる孫に野菜を届けてやるのさ」一番列車を待ちながら、おばあさんは嬉しそうに話してくれた。
■カメラ:ニコンFM2 レンズ:ニッコール180mm F2.8 絞り:f8 シャッタースピード:1/125 フィルム:RDP・ 撮影地:長野県飯山市(撮影当時)
信濃平駅 5月 |
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初めての個展開催で思わぬ反響。
それがきっかけになり写真集出版へ。
やがて飯山線を撮影した写真を多くの人に見て欲しいと考えた滝沢さんは、自宅近くの屋代駅に併設されていたギャラリーで、初めての個展を開催しました。
「そうしたらすごい反響があり驚きました。地元の新聞社をはじめテレビにも取り上げられました。信越本線などと同じ長野県内を走る飯山線でしたが、それまであまり知られていなかったのです。個展を開催したことで、その存在を再認識してもらうことができました。特に冬場の豪雪の中で鉄道とともに生活する人々の姿には、感動していただけたようです。偶然、ご覧いただいた出版社の方が飯山線沿線の出身でした。それがきっかけになり初の写真集『ふるさと飯山線』を出版することになったのです」。
飯山線撮影で知り合った数多くの人々。
現在は手漉(す)きでつくられる「内山和紙」を新たなテーマに撮影。
現在でも飯山線を撮影している滝沢さんですが、写真集を出したことで一区切りをつけ、最近は新しいテーマに取り組んでいるそうです。それは『内山和紙』と言って、飯山線沿線の下水内郡栄村など、この地方に古くから伝わっている雪国独特の和紙です。
「飯山線の写真を撮りながら出会った一人が『内山和紙』をつくっている方でした。その方に招かれて作業場を見せてもらいました。手漉きで一枚一枚丁寧につくられています。この伝統工芸の魅力を伝えるために、あえてモノクロで表現しました。モノクロは色が無い分、新鮮味があり想像力が働きます。ただ残念なことに、モノクロ用の感材はどんどん減少しています。印画紙も以前ほど選択の余地がなくなり表現の幅がすごく狭くなっているんです。どうしても納得できない場合はパソコンに取り込んでプリントしています。何年か後にこのテーマで個展を開きたいですね。そしてその時は『内山和紙』にプリントした作品を展示できたらと考えています」。
テーマを決めてとことんその被写体を追求することが写真の楽しみだとおっしゃる滝沢さん。今も休日にはカメラを持って出かけられる滝沢さんの今後が楽しみです。
※飯山線…長野県「長野駅」と新潟県「越後川口」を結ぶローカル線。全線にわたり千曲川(信濃川)と並行。沿線は有数の豪雪地帯として知られている。
※内山和紙…発祥は江戸時代初期頃で、その後製法に改良が加えられ、凍皮、雪ざらし等独特の技法が確立した。楮を100%使用し、雪による漂白等から品質は強じんで通気性、通光性に富み、素朴な白さと変質の少なさから全国で愛用されている。
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