【木漏れ日の森】夏鳥として南の国から渡ってくるサンコウチョウは、山々の緑が色濃くなり始める頃、この森に訪れ、雄のリボンのような長い尾羽とブルーのアイリングが南国を想わせてくれる。暗い森に差し込む木漏れ日の光をたよりに、逆光に注意してスローシャッターでフィルムに焼き付けた。
■カメラ:キヤノンEOS-1VS レンズ:キヤノンEF600mm 4.0 絞り:開放 シャッタースピード:1/30 フィルム:RDPII 三脚使用 撮影地:山梨県北杜市大泉 サンコウチョウ/三光鳥 |
【高原の調べ】高原に流れるホオアカのさえずり。草原に揺れるキスゲの花。レンズを移動し角度を変えて、さえずるホオアカの前後にキスゲを入れて、黄色から緑色へのグラデーションを演出する。
■カメラ:ニコンF4S レンズ:ニッコールED800mm 5.6 絞り:開放 シャッタースピード:1/250 フィルム:RDPII 三脚使用 撮影地:長野県霧ヶ峰高原 ホオアカ/頬赤 |
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現在“クマタカ”の撮影に没頭。
それは幼い頃の原体験から繋がっていた。
現在、若尾さんが撮影に取り組んでいるのが絶滅危惧種に指定されている『クマタカ』。実はクマタカの生態は、まだ多くの謎に包まれているそうです。森林の中でもその姿を見ることはほとんどできません。カワセミの撮影で南アルプスを訪れていた時にクマタカがいることを知り、かわいいカワセミの世界だけでなく、ダイナミックなクマタカの世界にも挑戦されています。
「それまではカワセミを撮るために会社を辞めたと思っていたのですが、もしかしたら、本当はクマタカを撮るためだったのではないかと、後になって思いました」。
クマタカが飛んでいるきれいなシーンを撮ろうと思うと、3〜5日間はクマタカが現れそうなポイントで粘るそうです。
「何とか子育てのシーンを撮りたいと思っていますが、クマタカは鷲鷹類の中でも群を抜いて警戒心が強い鳥です。これまで人間の目を逃れて生きてきた鳥なんです。長い間クマタカを追っていると、絶対に近づいてはいけない時期があることもわかってきました。皆さんそうだと思いますが、生態の神秘的な瞬間というのは余念のない準備と調査、そして観察を行なって、膨大なデータを集めた者だけが撮影できるものだと思っています」。
撮りたい野鳥を決めたら徹底的に観察。
鳥の行動を学ぶことが大事。
キタムラ主催のフォトコンテストでも、野鳥を被写体にした作品が数多く集まっています。そこで、野鳥撮影におけるアドバイスを若尾さんからいただきました。
「いろいろな種類の鳥がいますが、あれもこれもと追いかけず、被写体を絞り込んで撮影されることをおすすめします。その鳥がどのような時にエサを食べているのかといった記録を数週間はつけてもらいたいです。そうすることで鳥の行動を学ぶことができます。そして、そこにある空気感を表現することが大事だと思います。そのためにはここでの光線はどんな具合かというように、光や風などを記録して計算すること。観察力と集中力が重要です。私は絵も描きますが、その絵は自分が撮りたいシーンを描いていることが多くあります。このように普段から、こんな風に撮りたいとイメージしておくことも大事なことです」。
今はとにかくクマタカ撮影の最終章に向けて、その仕上げに全精力を注がれているとおっしゃる若尾さん。山中での撮影では、ツキノワグマに遭遇して九死に一生を得たこともあったそうです。この取材の翌日からも再び、南アルプスの山中へ向かわれました。若尾さんの新しい作品に出会えるのももうすぐのようです。
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