ハワイだけをテーマにされた写真展・写真集は、
永年にわたり想い続けてきたこと。
 
――6月に東京と京都でハワイをテーマにした写真展が開催されます。
ハワイだけにテーマを絞り込んだ意図について教えていただけますか?


 モルディブとかタヒチにもよく行くのですが、回数的にはハワイが一番多いんです。今までに40回くらいハワイには行っており、いつかはハワイの写真集を作ってみたいと思っていました。
 今回、どのよう内容にしようかと、いろいろとハワイのことを調べていたのですが、ハワイのきれいな風景というのは日本でもすでによく知られていますよね。それに比べると“ハワイの文化”というのがほとんど知られていないことに気づきました。
 さらに最近はハワイブームで、さまざまなハワイアングッズも人気です。また、伝統的な踊りの『フラダンス』を教えるところも増えるなど、タイミング的にも面白いと思いました。

――ハワイの文化とはどのようなことでしょうか?

  日本でも“フラ”という言葉を耳にしますが、フラとはハワイ語です。フラにはダンス、演奏、詠唱、歌唱の全てが含まれています。また、フラは宗教的な行為でもあり、フラダンスも本来は神様にささげるための踊りです。
 ハワイには元々文字の文化がありませんでした。ですから歴史や神話を伝えてきたのもフラで、それが代々伝わってきたのです。ハワイの文化を表現するには、まずフラを撮影してみようと思い、そこから始めました。ですが、そう簡単に思い描いていた写真が撮れるものでもなく、今回最後までかかってしまったのがフラの撮影でした。
 そもそもフラの本を読んで研究して撮影したのは今回が初めてでした。以前にもフラの踊りを撮ったことはありますが、それがどのような意味で、どのような歴史背景があったのかなどとは考えてはいなかったのです。去年の11月くらいから準備して、今年はほとんどハワイに居たのではないかというくらいずっと撮影していました。

――ハワイの自然で我々がよく目にするのは「大きな波」「きれいな砂浜」「原色の花」などですが、今回はどのような自然を撮影されたのですか?

 今回は、フラ(文化)に加え自然もテーマに撮影に臨みました。ハワイには火山や深い森があり、そして珍しい野生動物もいます。また、ハワイにしかない植物も沢山あることを知って、それらを撮影して紹介してみようと思いました。
 実はハワイにはサーフィンの写真を撮りに来たのが最初でした。サーフィンというのも元々はハワイ独特の文化なんですが、その時はアメリカ文化としてのサーフィンに惹かれていました。それと南の島、青い海の美しさでハワイを選んでいました。
 そして、今回最も重点を置いたのは神秘的なハワイ、古代の姿を残すハワイ、そのようなものを浮き彫りすることでした。今、ハワイでも伝統的な文化が見直されている時代です。これまでは白人社会の一部としてハワイがあるという感じでしたが、ハワイには昔から独自の文化があって、そこに後から白人が入ってきたというのが今の考え方になりつつあります。
 さらに、今年の1月には古代式航海術のカヌーでミクロネシアを経て、沖縄をはじめ日本各地に寄港しながら横浜までの航海が行なわれました。これは、ポリネシアからカヌーで渡ってきた祖先を持つハワイの人々にとって、そのルーツの文化を再現するためのものでした。


【溶岩大地に生きる】黒くかたまった溶岩も、20年もすれば生命が芽生えてくる。まず、シダの胞子が風に乗って飛んでくるのだ。ここがジャングルになるのには、何年かかるのだろうか。
■ソニーα100 レンズ:16mm F2.8 Fisheye シャッタースピード:1/50  絞り:f13 ISO100 撮影地:ハワイ島

 

 

 

 

【黄金の海】ハワイには1500年ほど前、人々がカヌーに乗ってやって来たらしい。現代でもカヌー競争が盛んだが、先祖の記憶がよみがえるのだろう。夕陽の中で、海面が輝いているところをカヌーが通るのを待って、シャッターを切った。
■ソニーα100 レンズ:70-200mm F2.8G シャッタースピード:1/2500  絞り:f10 ISO100 三脚使用 撮影地:オアフ島

親しみやすく、海がきれいで天候も安定しているハワイは
撮影条件にも恵まれています。

――セイシェル・モルディブなど他の南の島々との違いはどのようなことでしょうか?

【流れる溶岩】広角レンズでこの光景を撮るのは大変だった。すごい熱気のため、なかなか近寄ることはできない。風向きが一瞬向こうへ流れた時に、近寄って撮った。
■ソニーα100 レンズ:Vario-Sonnar T* DT 16-80mm F3.5-4.5 ZA シャッタースピード:8 絞り:f8 ISO100 三脚使用 撮影地:ハワイ島


 親しみやすく、海がきれいで天候も安定していて、雨季や乾季というものもあまりありません。そういう意味からも撮影条件に恵まれています。そして、アメリカ文化のひとつとして、ハリウッドの撮影のノウハウをコーディネイトするサービスがあるので、いろいろな撮影のアレンジが可能です。

――ハワイでのお気に入りの撮影スポットはございますか?

 ハワイのきれいな海の筆頭ということでは「ラニカイビーチ」があります。波が静かで海の色は淡いエメラルドグリーンです。砂もきれいなビーチでオアフ島のはずれにあります。
 ビーチ以外では「火山」ですね。マウイ島にある「ハレヤカラ火山」は、日の出を見に行ったり、日の出前の星空を見るのに適したポイントです。
 また、ハワイ島の「キラウエア火山」は溶岩が流れ出ていることで知られています。私も前から一度見てみたいと思っていたのですが、今回初めて真っ赤な溶岩を目の前で撮影しました。それは私が今まで行なってきた中で最も大変な撮影でした。そして撮影中、最も神聖な気持ちになった場所でもありました。

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