日本ほど豊かな海岸線がある国は珍しい。
海の中も変化に富んでいます。
――世界各地の海に潜ってこられましたが、お気に入りのエリアはありますか?

 どこが一番いいですか?とよく聞かれますが、国や地域によって海の姿もいろいろですし、その成り立ちも含めてそれぞれ違いがあります。日本は東京湾をはじめリアス式の海岸に囲まれていて、国土の面積に比べると非常に長い海岸線を有している国です。また、島も多くあります。そのような海なので多様な生き物が住むことができるのです。大きな大陸の国などは、日本に比べて海岸線がのっぺりとしていて変化がありません。だから日本ほど豊かな海岸線がある国はないと思っています。
 ですから、海外に行くとあらためて日本の海の素晴らしさがわかります。沖縄の珊瑚礁は、世界の珊瑚礁の北限にあたります。また、オホーツク海は流氷の南限にあたります。さらに多様な海流にも囲まれていて、そこでは多くの自然の恵みが育まれているのです。

【キンメモドキの群れ】サンゴの周辺や洞窟内に、おびただしい数で群れるキンメモドキ。時折、ミノカサゴや回遊性の魚がこの中に突っ込み、捕食している。
■カメラ:ニコンF3 レンズ:ニッコール20mm シャッタースピード:1/60秒 絞り:f8 RFP 撮影地:沖縄

地球が46億年かけて築いてきたものを、
わずか50年で破壊してしまうのは、許されないこと。
――地球温暖化など環境問題が叫ばれています。
自然と密接な関係にある水中写真家としてどのように思われますか?

【オキナワトウゴロウ】
毎年初夏に現れては、冬、いずこかへと消えていくイワシの仲間。集団行動をとることが、彼らの最大の生きる手段である。
■カメラ:ニコノスRS レンズ:フィッシュアイニッコール13mm シャッタースピード:1/125秒 絞り:f5.6 RVP100 撮影地:沖縄


 
日本という国は、非常に『水』に恵まれています。川も数多く流れていて、清流もいっぱいあります。そのせいか人々は水に対して意外と無頓着なところがあります。水に愛着を持っていないように思えます。それが乱開発につながり、日本列島をズタズタにした原因の一つでもあると思います。
 日本の国土は小さいけれど、豊かな森が数多くあります。その森の恵みが川や海を育ててきました。それが今では開発によって森の恵みが十分に川や海に還元されなくなっています。例えば、川の流れを人工的に変えて真っ直ぐにすることなどは言語道断です。自然というものを全くわかっていない証拠です。46億年の月日が築いた自然の重みを、40〜50年しか生きていない人間の判断で破壊してしまうことは許されないことです。
 自然界は時に我々に害を及ぼすこともありますが、悪いものはひとつもないのです。人間がちょっと我慢すれば、その後には素晴らしい恵みを与えてくれます。野生動物はとっくに知っていることですが、人間はそれに対する知識がまだまだ甘いと思います。人間が自然界に何かしてあげようなどと思うことは非常におこがましいことです。自然界にいかに受け入れてもらうかを考えた方がいいと思います。そうしないと、自然界も我々に対して心を開かないと思います

――本日はお忙しいところありがとうございました。



【東京湾のお台場で見つけたイソガニの母親】お腹にはちきれんばかりの卵を抱き、シャンと立つ誇り高きカニである。
■カメラ:ニコンF3 レンズ:ニッコール60mmマクロ シャッタースピード:1/60秒 絞り:f11 RFP 撮影地:東京湾・お台場

 
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