協力:カメラのキタムラ

カメラノキタムラ
Studio Mario

夏 Vol.77 SUMMER|思い出づくりどっさりの夏あれも絵になる、これも絵になる

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   思い出を作る道具たち Vol.1 芳賀日向

思い出を作る道具たち

写真家の道具論お役立ちグッズプロの金言撮影機材& 持ち物リスト

写真家の道具論 祭り撮影は機動力 Vol.1 芳賀 日向

毎回プロの写真家の仕事場にお邪魔し、愛用の機材や、撮影に便利なアイテムをこっそりと見せてもらいます。第1回目は、祭り写真のエキスパート、芳賀日向さんが登場。都内の事務所に伺うと、約束の時間よりも前だというのに、芳賀さんは上から下まで撮影用の服に着替え、準備万端で迎えてくれました。

機動性を高めて、自分の足で動き回りたい

「意外に少ないでしょ?」と芳賀さん。一見したところ、荷物は日帰りのハイキングよりも少ないが、「これだけで大丈夫!」なのだそうです。

「祭りの撮影でいちばん重要なのは機動力。そのため、私は2台のボディに2本のズームレンズを取り付け、いつでもシャッターを押せるようにしています。通常は標準ズームとワイド系ズームになりますが、場合によっては望遠ズームを取り付けて撮影に備えます」

愛用のカメラバッグは、戦地取材報道カメラマン向けの輸入品。体格のいい芳賀さんが身につけるとそれはまるでガンベルトであり、ポケットに収まったカメラは二丁拳銃のようです。
「フィルムカメラを使っていた頃は、中判カメラも併用していたのでフィルムもたくさん必要でしたが、今はこれだけで済みます。基本的には三脚も不要。デジタルになってからはずいぶん身軽になりましたよ。もしかしたらアマチュアの方より少ないかもしれない(笑)」

不測の事態に備えて、プロの道具は多くなると考えられがちだが、芳賀さんの場合は違っています。プロだからこそ、道具は必要最低限に抑え、そのぶん機動性を高めて、現場では自分の足で動き回るというわけです。道具にとらわれがちな私たちアマチュアにとっては、目からうろこが落ちる言葉です。

最前列で身をかがめて撮影するために…

祭りの撮影で一番大切なのはマナーだと語る芳賀さんは、服装にも気を配っています。もちろんそれはお洒落のためではありません。

「お祭りでは、カメラを持った自分が、背景の一部として、他人の写真に写りこむことがあります。そんなときあまりにも派手な服装をしていると、主役よりも目立ってしまうことがあるんです。撮影では列の前に出ることも少なくないので、私はできるだけ地味な服装を心がけています」

服装といえば、先ほどから気になって仕方ないのが、両膝に巻かれたサポーター。週3回、合気道の道場に通って汗を流している芳賀さんのことだから、怪我でもされたのかと心配し、お尋ねすると……。

「これがあると楽なんです。下が砂利でもアスファルトでも痛くありませんから。私は体が大きいから、普通に身をかがめても後ろの人の邪魔になってしまう。でも両膝をつけて身をかがめると、地上30 センチくらいのローアングルから撮影できるんです。服が汚れるのが心配なら、オーバーパンツを履けばいいんですよ」

目の前で実演してくれた芳賀さん。180 センチの長身がみるみるうちに小さくなり、地面を這うカタツムリのようになりました。

EOS 5D MarkⅡの動画撮影機能を活用

Canon EOS 5D Mark ?は、すぐれた描写性能のほかに、芳賀さんに新しい表現の可能性を見せてくれました。それはEOS シリーズで初めて搭載されたフルHD 動画撮影機能。

「取材中、写真を撮りながら動画を撮りっぱなしにし、後で音源だけを抜き出して編集するんです。笛や太鼓の音も祭りの大切な要素。講演などで写真と一緒にこれを流すと、祭りの臨場感がよみがえってくるんですよ。でも最近は凝りすぎて編集に時間がかかり、更新が遅れがちですが…(笑)」

   興味のある方は、芳賀さんのブログ(http://blog.omatsuri-japan.com/)をご覧ください。ムービーを見る以上に 祭りのイメージが広がり、シャッターを押す芳賀さんの興奮が伝わってきますよ。
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プロが教えてくれたお役立ちグッズ

  • ポンチョ&シャワーキャップ
  • 突然の雨から機材を守るため、芳賀さんはいつもバッグに雨具を忍ばせています。大き目のポンチョは遊園地の売店で100 円で購入。カメラをレンズごとすっぽり包むシャワーキャップは、ホテルのバスルームにあったものを拝借して使っています。
  • 膝サポーター
  • 最前列での撮影では、後ろの人のジャマにならないように、地面に膝を付いて身を低くしなければなりません。そんなとき、居合道用の膝サポーターが重宝します。また、オーバーパンツを用意しておけば、汚れも気にならずに済みます。
  • 脚立
  • 名刺入りストラップを取り付けた愛用の脚立。場所取りの間は、ここに腰を下ろして、体力の温存をはかります。二段と三段を所有していますが、通常の撮影では二段を使用することのほうが多いそうです。
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プロの金言 「三度同じ祭りに通うとうまく撮れる!」

「本やインターネットを駆使した事前の情報収集は大事ですが、祭りの撮影は一度でうまくいくことはありません。祭りの性格や進行を体験的に知り、現地の人々と言葉を交わすなどして生の情報を得なければ、決定的なシーンを押さえることは難しいからです。そのためには、同じ祭りに何度も足を運んで、失敗を繰り返すことが大切。最初の撮影は場所取りの調査を兼ね、二度目は練習、三度目にようやく本番を迎えるくらいの気持ちで、ねばり強く取り組んだほうが、傑作をものにする近道になる場合が多いようです」

愛知県北設楽郡に伝わる花祭。巨大な鬼面を付けた鬼の舞が夜通し行われる。「隣の天狗がじっと僕を見ていたのには、この写真を見るまで気づきませんでした」と芳賀先生。投げられた榊を手に持って撮影を続けたそうです。

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撮影機材&持ち物リスト

カメラバッグの中身。
ストロボの外部バッテリーを含めても総重量は7kg に満たない。

カメラボディ
Canon EOS 5D
Canon EOS 5D Mark II

交換レンズ
EF70−200mm F2.8L USM
EF24-105mm F4L IS USM
EF17-40mm F4L USM

ストロボ
スピードライト550EX(ディフューザー付き)

その他
CF カード(16GB を4 枚)、単3 形アルカリ電池(ストロボ用の予備バッテリー)、クリーニングクロス、ポンチョ&シャワーキャップ、携帯ライト(夜の祭りでは欠かせない)、パーマセルテープ(光の漏れを防ぐ遮光テープだが、手で切れるので何かと便利)、日本写真家協会のプレスカードと腕章。

「3度同じ祭りに通えばうまく撮れる」という金言が飛び出した今回のインタビューは、芳賀さんの事務所で行われました。撮影時の服装だけでなく、カメラバッグを身につけた姿、膝サポーター、さらに雨が降ったときに使うポンチョまで、編集部のリクエストに応えてさまざまな格好をしてくれました。

脚立に腰かけているカットは、「撮られるのは苦手だなぁ」とぼやきながらの撮影。苦笑いしていた様子と、それまで写真に対しての熱い思いを語っていた芳賀さんとのギャップに、その場が和みました。

写真家が撮影している姿は実はなかなか撮る機会がありません。同じ祭りの撮影で出会った仲間から撮影中の姿をもらうことが何度かあったそうです。上の写真は、その中の1枚。

取材が終了した後は、芳賀さんの事務所の近くにある中華料理屋に皆で食事へ。その中華店は、「実は私がメニューを開発して、新メニューのチラシも作ったんだよ」とびっくり発言が飛び出しました。芳賀さんが撮影も手掛けた渾身のチラシは、お店のみなさんにも好評で、メニュー全品の写真を撮ってほしいといわれているそう。中華料理写真家になる日もそう遠くないのかもしれませんね。

芳賀さんの取材は、立ったり座ったり、いろいろなものを身につけたり、機材の説明をしたり…と盛りだくさんの内容でした。

最前列で撮影するために…の説明をするときに、急に床にはいつくばり姿勢をとったところ。あとで誌面用に改めてポーズをとってもらいました。

c

1956年、長野県軽井沢生まれ。成蹊大学法学部、米国西イリノイ州立大学文化人類学科卒業。国内外の祭・民族・文化を中心に撮影し、取材訪問国は47カ国に及ぶ。 (社)日本写真家協会・日本旅行作家協会会員。趣味の合気道は現在四段。山伏の免許を持つ(山伏名は「芳賀陽晃」)。

芳賀ライブラリーのホームページ
http://hagafoto.jp/

芳賀 日向(はが・ひなた)
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