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種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー

2015.10.23【Vol.241】

レンズ構成の話 トリプレットタイプ

わずかレンズを3枚使っただけの写真レンズをトリプレットタイプといいます。凸メニスカス(1枚)、対称型(2枚)、テッサータイプとレンズの進化過程でレンズの枚数は増えて行ったようです。トリプレットはその名前から推察できるように3枚構成のレンズです。

トリプレットタイプはイギリスのH.Dテーラーが1893年に開発したレンズです。当初はクック社からそのレンズが発売されていたこともあり「クックのトリプレット」とも呼ばれます。現在ではあまりトリプレットタイプのレンズというのは見かけませんが、昔の普及タイプのカメラには多く使われていました。

凸凹凸の配置間隔を変更するだけで、レンズの欠点である収差を効率的に補正できる特徴を持つトリプレットタイプ。周辺部の歪みやピントのわずかなズレなどの収差が完全に補正できるわけではないのですが、わずか3枚のレンズを使用するだけというコスト面にも優れたレンズです。コンピュータによるレンズ設計のない時代の研究者の苦労は大変なものだったと思います。ですが、このトリプレットのように3枚のレンズ配置の変更で各種収差補正できる設計の自由度の高いレンズは当時としては夢のようなレンズだったのではと考えられます。その結果として1960年代までは普及タイプのカメラに搭載されるレンズはトリプレットが多くを占め、最終的には開放F値は明るくF2.8になりました。

周辺部が流れたりボケが汚かったりといわれるトリプレットですが、レンズそれぞれ個性が強く、わずかな設計の違いなのか、周辺部までスッキリと写るものから、全体的に眠いもの、中心部が極端に優れてシャープなものなど、いろいろなレンズの個性を楽しめるレンズなのではないでしょうか。


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