キヤノン RF100-400mm F5.6-8 IS USM レビュー|野鳥写真ビギナー向け望遠レンズ

戸塚学
キヤノン RF100-400mm F5.6-8 IS USM レビュー|野鳥写真ビギナー向け望遠レンズ

はじめに

前回はCanon EOS R7について野鳥撮影に適したミラーレス一眼カメラと書きましたが、いくら野鳥に適したカメラと言えどもレンズが無ければ撮影はできません。そこで、前回最後に少し触れた「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」について書いてみたいと思います。

EOS R7にRF100-400mm F5.6-8 IS USMを装着。
ワイド端100mm側で手に持った状態。超望遠ズームとは思えない大きさ。
テレ端400mm側で手に持った状態。テレ側Maxにしてもこの大きさ。もちろん軽いのでお散歩用としても苦にならない。
車の窓から港のスロープに集まるカモたちを撮影しているとセイタカシギのペアが飛んで来て、どんどんこちらに向かって歩いて来ると・・・おや?まさか真冬に交尾前の行動を始めたと思ったら交尾をしちゃった!近すぎたのでフレームからはみ出さないように248mm(35mm換算約396mm)にズーミングして交尾を一部始終撮影できた。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/1000秒 ISO1600 WBオート PS ディテール重視
ブラインドの中からオシドリを狙っていると、2つのペアのオスがお互いのメスの前で見栄を張り合い始めた!暗いので電子シャッターを使いシャッターショックをおさえ連写をした。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/400秒 ISO1600 WBオート PS ディテール重視
こちらに向かって飛翔してきた1羽を狙う。軽量なので手持ちでの負担が少ない+瞬時に鳥の動きに対応できるのでチャンスを逃しにくくなる。林の前に来るのを待ち純白の身体が映える瞬間を狙った。
■撮影機材:撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/3200秒 ISO640 WB0オート PS ディテール重視
宿前のテラスでオスのライチョウが、侵入者がいないか、にらみを利かせて見張る。大きく重いレンズではたくさんのカメラマンの隙間から狙うのが難しいが、コンパクトで軽いレンズだからこそ、隙間を利用した撮影も可能になる。
■撮影機材:撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/2000秒 ISO400 WB太陽光 PS オート
青空をバックに飛翔するタンチョウ。大きな鳥なので400mmでははみ出しそうなので、120mm(35mm換算192mm相当)にズーミングしながら撮影。ズームミングで瞬時に大きさを変えての撮影ができるのはズームレンズの良さだ!
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F11 1/3200秒 ISO640 WB太陽光 PS ディテール重視

軽い is BEST!

RF100-400mm F5.6-8 IS USMはEOS R7よりも先に発売されていました。軽くて小さいのに100mmから400mmをカバーできるズームレンズですが、それまでのRFレンズのラインナップから見ると「Lレンズ」ではないし、名機RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMがすでにあり、ズーム域が被るためこのレンズを持っている方からするとスルー対象になっていました。

しかし、これから野鳥撮影を始めたい、野鳥以外でも望遠系ズームが使いたいという方にはEOS R7と組み合わせるならRF100-400mm F5.6-8 IS USMがおススメです。理由はEOS R7との組み合わせなら35mm換算で160mm‐640mmの超望遠ズームになるからです。

また、気になる重さですが・・・
RF100-400mm F5.6-8 IS USM:約635g
RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM:三脚座込み約1530g(895gも重い!)
EOS R7の重量:530g(本体のみ)

EOS R7とRF100-400mm F5.6-8 IS USMの組み合わせなら約1165gと、超望遠ズームレンズなのに超軽いのでフットワークも軽く撮影ができます。加えて手ブレ補正も強力なので、女性や高齢者にとってもありがたいセットとなります。

夕方ねぐら入りするタンチョウを待っているとシマエナガの群れが現れた、ちょこまか動くので少しでも速いシャッターが切りたい。そこでISO4000まで上げ、電子シャッターに切り替え、SS1/500秒で対応した。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO4000 WB日陰 PS ディテール重視

その写り・・・想像以上

気になるのは「その写り」ですが、私が初めてこのレンズを使ったのは、とあるレビュー記事の依頼での事。すでにRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMを使っていたので、はっきり言って「こんなおもちゃみたいなレンズで大丈夫か?」でした。

その時に使ったカメラはEOS R5、のちにEOS R3でも使いましたが、結果は「まじかよ!」でした。Lレンズでもないのにこの写り!その理由はUDレンズを1枚使用しているからでしょう。また、強力な手ブレ補正とレンズのコンパクトさが相まって、手持ち撮影の幅が一気に広がる予感がしました。

私はライチョウを撮るためによく立山へ通っています。本格的な登山はしないのですが、空気の薄い場所なので動かなくても疲れてしまいます。そんな時にEOS R7とこのレンズの組み合わせの軽さはとてもありがたい。最近は立山にはツアーガイドで訪れることが増えており、自分の作品撮影よりもお客様に楽しんで撮影をしていただくことに徹底できるので、この軽さは何物にも代えがたくなっています。

車の前でチョウゲンボウがホバリングを始めた!フロントガラスが邪魔なので窓から身を乗り出して撮影する。機材が軽いので無理な体勢でも無事撮影をすることができた。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/2500秒 ISO800 WB太陽光 PS ディテール重視
何かがまっすぐこちらに向って来る?ほぼ頭上でハイタカだと気がついた。慌ててレンズを向けるとすぐにピントが合い、ハイタカを追い続ける。軽くてコンパクトなレンズだからこんな撮影ができた。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F10 1/3200秒 ISO640 WB太陽光 PS ディテール重視
ウソの鳴き声が聞こえたので周囲を見渡すとペアでハイマツにとまっていた。山の残雪バックではつまらないので、岩場がバックになる位置へ静かに移動して撮影する。カメラ&レンズの軽さはこういう時に有利に働く。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/800秒 ISO320 WBオート PS ディテール重視

高齢のお客様に勧めたら?

私は時々、旅行会社の撮影ツアーガイドをやっています。その時にご参加いただいた方がEOS Kiss X50とサードパーティ製の100‐400mmを持って来られていました。しかしこのセットが超重いし、カメラもKissと言えどもそれなりに重いし、使い勝手が非常に悪そうでした。そこで、軽くてコンパクトなEOS R7とRF100-400mm F5.6-8 IS USMを勧めたところ、次のツアーでは買い揃えての参加になりました。

早速カメラをセッティングして撮影してもらうと、本人が驚くほどの写真が撮れているようで夢中で撮影をされていました。どのようなシーンが撮れていたかと言えば、カツオドリの飛翔がフレームいっぱいにガチピン。それどころか海面にダイブするシーンまで撮れていました!軽くコンパクトなセットだからこそ可能になった撮影です。

ちなみに彼女の年齢は現在82歳!この話は昨年の事ですが、現在もこのセットでバリバリ撮影を楽しんでおられます。飛翔する鳥の撮影ができれば、とまりやのんびりと動いているシーンはいとも簡単に撮ることができます。ちなみに彼女は9割手持ち撮影ですが、「疲れた、腕が痛い」という言葉を聞いたことがないので、いかに優れたセットかがわかると思います。

お客様の写真を使うわけにはゆかないので、私が撮影したものでイメージしていただきたい。まさにほぼこの通りのカットが撮れていた。急な動きに対応できるのは軽い機材だからこそだろう。
■撮影機材:CANON EOS R3 + RF800mm F11 IS STM
■撮影環境:F11 1/4000秒 ISO1000 WB太陽光 PS オート

エクステンダーも使えちゃう?

RF100-400mm F5.6-8 IS USMはRFレンズ用の1.4倍と2倍のエクステンダーが装着可能。APS-Cボディを使った場合、テレ端400mmに1.4倍エクステンダーを使えば35mm換算896mm F11、2倍エクステンダーを使えば1280mm F16となります。

2倍エクステンダーを使用してもAFは使えますが、若干フォーカス速度は遅くなります。無理に2倍エクステンダーを使うよりも、RF800mm F11 IS STMを使用すればF値が一段明るくなるしバランスもいいので、個人的にはこちらをお勧めします。2倍エクステンダーの価格が77,220円、RF800mm F11 IS STMの価格が128,700円なので、約5万円の価格差でレンズ1本と考えればこちらの可能性も捨てがたいですよね(価格はキタムラネットショップ2023年12月時点のもの)。

RF100-400mm F5.6-8 IS USMに2倍のエクステンダーが装着可能という事を証明するためにチャレンジしたカット。800mmの1.6倍だから1280mm。大きくするとさすがにEOS R5でもやはり陽炎と粗さが気になる。しかし無茶ぶりでここまで描写するとは本当に驚きだった。
■撮影機材:CANON EOS R5(1.6倍クロップ) + RF100-400mm F5.6-8 IS USM + EXTENDER RF2x
■撮影環境:F20 1/1000秒 ISO1600 WB太陽光 PS オート

Lレンズと比べれるのは酷なのですが(笑)

さてここまでRF100-400mm F5.6-8 IS USMを褒めちぎってきましたが、「Lレンズ」ではないことを伝えないと「嘘つき野郎」と呼ばれてしまうので補足しておきます。

私はフイルム時代から写真を始めており、当時は基本的に安いズームレンズ=ダメなレンズで間違いはありませんでした。安価な超望遠レンズは開放絞りで撮影すると色にじみとピントが甘くなる特徴があったんです。それがトラウマになりデジタルになってもLレンズ以外は使いませんでした。

ところがRF100-400mm F5.6-8 IS USMはその常識を覆す出来栄えでした。ただ、やはり暗い場所でのピント精度が弱くなることと、夕方での逆光撮影ではフォーカスが迷うことがあります。RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMと比べた場合の画質も同等とはいきませんが、順光での撮影ではAF速度に不満は感じませんし、AF精度も問題ありません。仕上がった写真については、よほど拡大して厳しくチェックしない限り「粗」は見当たりません。また、防塵防滴ではない点も挙げられますが、“この価格”を考えれば納得すべきところです。

開放F値が5.6~8と暗いのが心配に感じる人もいるかもしれませんが、ここはミラーレス機のいいところで、ファインダー内で明るさを確認して調整できるので、撮影時に視界が暗いという問題もありません。

※暗い場所でファインダー内を明るくしたい場合は、ISOを上げるかシャッター速度を遅くするかの二者選択を強いられるので、自分がどちらを優先するかを決めておくといいでしょう。

夕陽をバックに佇むライチョウを狙うが、さすがに空と林の明るさの差とライチョウの目が林に溶け込んでしまうため、AFが迷い始めた。仕方ないので、AFエリアを領域拡大上下左右AFにしてマニュアルでちょっぴりAFアシストして撮影した。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/250秒 ISO400 WBくもり PS ディテール重視
エサ台に集まる小鳥を狙っているとすぐ近くにシジュウカラがとまった!急なことで慌てて400mm側で撮影するとどアップになってしまったが、かわいい正面顔を撮る事が出来てラッキーだった。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/500秒 ISO1000 WBオート PS ディテール重視
ハゼの実を食べに来るルリビタキを待つと思い通りの枝にとまってくれた。実をくわえてすぐ飛ぶかなと思ったが意外とのんびりしてくれて縦位置の撮影もできた。機材が軽いと手持ち撮影でいろんなバリエーションを撮ることができる。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/400秒 ISO1600 WBオート PS ディテール重視
何があったわけではないが、急にタンチョウたちが一斉に飛び出した!突然なことで慌てたが、機材の軽さを活かしてズーミングしながら無我夢中で撮影をすることができた。
■撮影機材:CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/3200秒 ISO640 WBくもり PS ディテール重視
機材が軽いのでテトラポッドに隠れながらゆっくりとミヤコドリに近づく。できるだけ姿勢を低くしてバックの工場を入れて撮影。軽い機材なら老いた身体にかかる負担は少なくて済む。
■撮影機材: CANON EOS R7 + RF100-400mm F5.6-8 IS USM
■撮影環境:F8 1/1000秒 ISO800 WBオート PS ディテール重視

さいごに

安いレンズは安いなり、高いレンズは高いなりの特徴とメリット・デメリットがあります。それをどう活かすかは使用する人次第だと言えるでしょう。

野鳥写真=超望遠レンズが必要になるのは避けようがないと理解した場合、安くて(決して安くはないが、今の時代10万円前後は安い)軽くてコンパクトという利点は非常に大きいです。まずはこのRF100-400mm F5.6-8 IS USMとEOS R7のセットで野鳥を撮りまくってください。このレンズ1本で十分に野鳥撮影を楽しむことができると思います。その上で「やはりLレンズが欲しい」と思ったらRF100-500mm F4.5-7.1 L IS USMを使うのがおすすめです。

 

 

■野鳥写真家:戸塚学
幼少の頃から好きだった自然風景や野生の生き物を被写体として撮影。20歳の時、アカゲラを偶然撮影できたことから野鳥の撮影にのめり込む。「きれい、かわいい」だけでなく、“生きものの体温、ニオイ”を感じられる写真を撮ることが究極の目標。作品は雑誌、機関紙、書籍、カレンダー、コマーシャルなどに多数発表。
・日本野鳥の会 会員
・西三河野鳥の会 会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員

 

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