マクロで撮ろうスイセン!|クニさんの季節の花レシピ

マクロで撮ろうスイセン!|クニさんの季節の花レシピ

はじめに

本格的な冬が始まり、ひと休みしていた花たちも新しい年を迎えるのを待っていたかのように次々と咲き始めます。
まだまだ遠慮がちに咲く花も多いですが、そんな中でひときわ目立つのがスイセン。
彩りの少ない季節にほんのりと色を灯してくれるかわいい花です。
まだまだ寒い時期ですが、ぜひこの冬はマクロレンズでひと味違ったスイセンの写真を撮影してみませんか?

心に触れた主役を見つけよう

密集して咲くことの多いスイセン。
漠然と撮ってしまうとたくさんの花が画面に入って、どれが主役なのかわからなくなりがちです。
しっかりとよく観察して、気になる一輪を見つけてみましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X-H1 + XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.7)・ISO400・フィルムシミュレーション PRO Neg.Hi

密集から少し離れたところに咲いていた一輪。
あっちこっちとキョロキョロしているような花たちがかわいいなと思いました。
高い目線から撮ってしまうと背後に咲く花も写り込んでしまい、煩雑な印象になってしまいます。
そこで目線を下げて、花より少し低い位置からカメラを構えました。
下から見上げるように撮ることで、背景に木漏れ日を入れることができます。
開放絞りの大きなボケが作り出すシンプルな背景ボケが、主役を際立たせてくれました。

特徴を掴んでクローズアップ

魅力的な花全体の姿を捉えることもいいですが、やはりマクロ撮影の醍醐味はクローズアップ。
花をよく観察して、面白いと感じる部分や特徴的な部分を見つけます。
そして気になった部分をクローズアップして、主役が引き立つような画面構成を探りましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X-H1 + XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.0)・ISO200・フィルムシミュレーション PRO Neg.Hi

スイセンの特徴的な部分は、花びらの形や葉っぱなどいろいろあります。
中でも一番はやはり、ひよこのくちばしのような黄色い副花冠。おちょぼ口が可愛いですよね。
そこでこの副花冠をクローズアップ。
すると朝露が残した雫が、まるでほっぺたに付いたご飯粒のようにぶら下がっていました。
この部分だけをクローズアップしてもいいのですが、周囲の雫の反射による光のボケを入れて、朝の清々しい雰囲気を演出してみました。

背景を意識しよう

写真は主役も大事ですが、その主役を活かしてくれる背景も同じぐらい大事です。
背景が少し変わるだけでも、写真のイメージが大きく変わってしまいます。
どういうイメージで撮りたいか、しっかり考えて背景選びをしましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X-H1 + XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.3)・ISO200・フィルムシミュレーション PRO Neg.Hi

スイセンの群生のすぐそばにサザンカが咲いていました。
でももうピークは過ぎてしまっていて、はらはらと散った花びらがピンク色の絨毯のようです。
この散ってしまったピンクの花びらに光が当たるタイミングを見計らって撮影しています。
陽射しに照らされて鮮やかに染まる花びらを背景にボカすことで、暖かさが感じられる一枚になったのではないでしょうか。
まだまだ冬真っ只中。寒い中にもほんの少し春の近づきが感じられてホッとする、そんなイメージを思い浮かべながら撮影しました。

花を撮るときは花と同じ目線で撮影することが基本なのですが、この場合は上から見下ろすようにカメラを構えて、花びらが画面にたくさん入るポジションを探っています。

朝露の輝きを撮ろう

冬の早朝は気温が下がって霜が降りるので、草木に朝露がびっしり付いているのを見ることができます。
そこに朝日が差し込んでくると、朝露が光を反射してキラキラと輝いてくれます。

■撮影機材:FUJIFILM X-H1 + XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(-0.7)・ISO200・フィルムシミュレーション PRO Neg.Hi

スイセンの葉に乗ったひと粒の朝露を主役にしました。
マクロレンズを絞り開放にして最短撮影距離まで寄ると、被写界深度(ピントが合って見える範囲)はごくわずか、数ミリ程度になります。
ひと粒の雫にぐぐっと迫ってクローズアップすると、周囲の雫がキラキラと輝く大きな光のボケとなって主役を包みこんでくれました。

このようなボケは、肉眼では見ることができません。
また、ほんの少し撮影ポジションを動くだけでボケ方が大きく変わったり、ボケが見えなくなったりします。
ですので、ファインダーを覗いてボケ方を確認しながら最適なポジションを探すことが大切です。

雫に花を閉じ込めよう

冬の早朝や雨の日などに花や葉っぱにぶら下がる雫。
花がたくさん咲いているお花畑でそんな雫をよ~く観察してみると、雫の中に花が閉じ込められているのを見つけることがあります。

■撮影機材:FUJIFILM X-H1 + XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.0)・ISO400・フィルムシミュレーション PRO Neg.Hi

花を映し込んだ雫を見つけました。映り込んでいるのは雫の真後ろにある花です。
カメラと雫、背景の花が一直線に並んでいると、綺麗な映り込みになります。
角度が少しずれてしまうと花の姿が見えなくなったり歪んでしまったりするので、ファインダーを覗きながら少しずつ撮影ポジションを変えて、一番綺麗に映り込む場所を探しましょう。

いろいろなものに目を向けよう

花を撮りに行ったからといって、必ずしも花を主役にしなければいけないわけではありません。
その場で面白いな、気になるなと感じたものを主役にして撮りましょう。

■撮影機材:FUJIFILM X-T3 + XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.3)・ISO200・フィルムシミュレーション ASTIA

まっすぐ伸びたスイセンの葉っぱに日差しが当たって陰影をつけていました。
この陰影のある葉っぱに魅力を感じて主役に選びました。
ただ撮っただけでは面白みがないと思い、葉っぱの上部を花の前ボケで隠して撮影。
開放絞りによるシンプルな背景と相まって、主役の葉を印象的に写せました。

前ボケを活かして主役を引き立てよう

主役の花の前に他の花などを置いてボカすことを前ボケといいます。
傷んだ花や葉っぱなど、主役の印象を弱める邪魔なものを隠したり、画面全体をふんわりやわらかい雰囲気にする効果があります。

■撮影機材:FUJIFILM X-T3 + XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.7)・ISO200・フィルムシミュレーション ASTIA

一面に咲くスイセンの群生の隙間から、少し奥に咲く一輪を主役に狙いました。
手前の二輪が大きくボケて、主役の花以外のものを隠してくれます。
これにより、写真を見たときにパッと主役の花が目に飛び込んでくるようになります。

前ボケを入れるコツは二つ。
一つは、目線を前ボケにする花と同じ高さにすること。
レンズの前にボカす花を置く必要があるので、花より高い位置から撮るとレンズ前に花が入らず、前ボケにはなりません。
もう一つは、前ボケにする花にできるだけ近づくこと。
レンズから離れたところにある花を選んでしまうと、花の形が出てしまいふわっとしたボケになりません。
前ボケを入れた撮影をするときは、ぜひこれらのことを意識してみてください。

夕方の斜光線でドラマチックに

冬は太陽の位置が低いため、夕方になると横からの光線が花を照らしてくれます。
このように横から当たる光を斜光といい、被写体に適度な立体感や影が付いて、ドラマチックな雰囲気を演出してくれます。

■撮影機材:FUJIFILM X-H1 + XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro
■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.0)・ISO400・フィルムシミュレーション PRO Neg.Hi

左から差し込む太陽に向かって咲いている一輪のスイセン。
背景にある花や葉っぱに当たった光が反射したボケが、キラキラと主役を包んでくれました。
たくさんの光に包まれて、明日への希望を感じさせるようなイメージになったと思います。

光がキラキラ輝いているイメージは、大きなボケよりもこのように小さなボケの方が伝わりやすい場合も多いです。
いつも大きくボカすだけではなく、伝えたいイメージに合ったボケになるように撮り方を工夫することが大事です。
また、光の反射がかなり明るいので、プラス補正を多めにかけて明るさを調節しました。

おわりに

特徴的な花の形をしたスイセンだけにいつも狙いが似通ってしまい、同じような撮り方の写真ばかりになりがちです。
でも、ちょっと視点を変えるだけでいろいろなバリエーションの撮影ができます。
よく観察して特徴的なポイントを掴み、その部分にクローズアップしてみたり、背景を絡めて撮影したり、普段は撮らないアングルから観察してみたりと、いろいろ試行錯誤してみてください。
きっと思いもよらない発見がありますよ。

ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながらぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね!

 

 

■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。

写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)、2023年、2024年「Nature Flowres」(東京)
写真集「花色の息吹」(風景写真出版)

日本風景写真家協会 会員
一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
フォトマスターEX(総合)
カメラのキタムラ写真教室/OM SYSTEMゼミ/リビングカルチャー倶楽部 他講師
クニさんの花マクロ写真塾 主宰

 

 

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