ニコン Z 50 レビュー | 小型・軽量で気軽に持てる旅カメラ!
はじめに
ニコン Z 50は、ニコン初のDXフォーマットのミラーレスカメラです。筆者はZ 6を愛用していますが、本機発表後にすぐ予約を入れたほど、魅力のある仕上がりとなっています。今回は、発売前に本機をお借りして、11月の上旬にフランスのパリに行ってきましたので、その作品と共にレビューをお送りします。
コンパクトサイズで旅行に最適!
■撮影環境:F5.6 1/50秒 ISO500 焦点距離30mm WBオート0 クリエイティブピクチャーコントロール:レッド
本機を手にして、まずはそのサイズ感に驚かされます。約126.5×93.5×60mmの小型ボディーは、Z 6のこども版というようなデザインで、外観に安っぽさは感じられません。重さは約450gと、ペットボトル一本分よりも軽く、長時間持ち歩いても苦にならない重量です。
キットレンズの「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」は、35mm判換算で24-75mm相当の画角を持ちながらも、沈胴時は約32mmというパンケーキレンズのような薄さなので、首からぶら下げてもカメラが‘こんにちは’と下を向くこともなく、スタイリッシュに持ち運びできます。
また、ニコンのカメラの特徴でもある、しっかり握れるグリップは本機でも健在で、小さくて薄いボディーでも、グリップ部分はしっかりとホールドできる厚みを確保し、握りやすい形状に作られています。カメラが小さくなると手の大きな男性や、ネイルをしている女性がホールドしにくくなることがあるのですが、本機は右手のみでしっかりと握ることができました。
ボディーは小さくても生み出す画は高画質
■撮影環境:F5 1/25秒 ISO1400 焦点距離16mm WBオート0 ピクチャーコントロール:ビビッド
画像処理エンジンはZ 7、Z 6と同じEXPEED 6を採用しており、この小さいボディーから生み出されたとは思えないほど、高精細な画像を作り出してくれます。
ISO感度は100~51200(204800相当までの増感可能)で、薄暗い朝でもノイズのない、グラデーションの綺麗な画にしてくれました。旅以外では薄暗い水族館で撮影をすることが多いので、ISO1600前後の画が綺麗なことは、筆者のカメラ購入の必須条件となっています。デジタルカメラなので当たり前のようですが、常用できる感度が高いほど、ISO1600前後の画像も綺麗に描いてくれます。
この綺麗に描くというのは、ノイズがないのはもちろん、明暗部のグラデーションを繊細に表現することが含まれています。黒つぶれ、白とびしていないぎりぎりの明暗部を、色彩豊かに描いてくれるカメラは、どこに行って、何を撮っても楽しいカメラになります。
ローアングル撮影に便利なチルト式液晶
■撮影環境:F6.3 1/100秒 ISO400 焦点距離50mm WBオート0 クリエイティブピクチャーコントロール:トイ
普段、小さな子供を撮影しているときなどは、一緒の目線になるためにカメラごと寝転んだり、ほふく前進の姿勢で撮影したりするのですが、さすがにパリの街中で寝転ぶわけにもいかず、今回はチルト式の液晶に撮影を助けられました。
パリでぜひ行ってみたい所が、アンティークなアーケード街のパッサージュでした。パッサージュとは、18世紀から19世紀にかけて建設された、高いガラス屋根が特徴的な商店街で、古本屋や雑貨屋などが軒を連ねる、歩いて回るだけでレトロを体感できる場所です。
外のような、でもガラス屋根があるこの場所で綺麗なのは、お店や看板に差し込む柔らかい光です。その情景をもっと優しい雰囲気にするために、クリエイティブピクチャーコントロールのトイを使って、全体の輪郭を柔らかく、少し赤味を足した暖かいムードに仕上げました。
Z 50にベストマッチの沈胴式ズームレンズ
■撮影環境:F4 1/400秒 ISO800 焦点距離16mm WBオート0 クリエイティブピクチャーコントロール:ポップ
キットレンズの「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」は重さ約135g、長さ約32mmで、撮影時に繰り出して使う沈胴式のズームレンズです。通常、この手のキットレンズは広角端は18mmからが多いのですが、自分撮りモードを意識してか、16mmスタートなのは、なかなか気が利いていると思いました。
いつもは標準画角の単焦点レンズを使用することが多い筆者ですが、このような旅先では、広角レンズで広がり感を表現したり、街中の情景を広範囲で写し込みたくなるので、少しでも広角側が広いことは、旅カメラに合わせるレンズとしてちょうど良かったです。
本機で話題になるのが、手ブレ補正機能が付いていない点ですが、このキットレンズには4.5段の手ブレ補正効果のある、光学式VR機構が内蔵されています。このパリの旅では、ほとんどを本機とこのキットレンズで撮影しましたが、薄暗い朝でも、光量の少ない室内でも、手ブレに悩まされることはありませんでした。
タッチパネルで楽々操作
■撮影環境:F13 1/25秒 ISO2000 焦点距離16mm WB:オート0 ピクチャーコントロール:スタンダード
操作系は、Zシリーズを使っていた人なら、何も見なくてもすぐ操作できる配置になっています。初めて本機を使う人も、タッチ操作で基本的な設定や変更はできるので、数時間使っていたら、すぐに慣れるでしょう。
また、本機に新搭載のタッチキーは、「拡大」、「縮小/サムネイル/ヘルプ」、「DISP(ディスプレイ)」の3種類が画像モニターの右側にあり、撮影した画面を再生して、拡大表示するときに特に便利でした。
iメニューのカスタマイズも、Z 7、Z 6同様行えます。撮影時にiボタンを押すと背面液晶、もしくはファインダー内にiメニューを表示することができ、使用頻度の高い項目を12種類設置することができます。被写体にもよりますが、筆者はピクチャーコントロール、アクティブD-ライティング、フォーカスモード、AFエリアモードの4種類は、必ずここに設置するようにしています。
ぐぐっと近寄れるキットレンズ
■撮影環境:F4 1/200秒 ISO800 焦点距離16mm WBオート0 ピクチャーコントロール:ビビッド
「NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR」のいい点は小さいだけではなく、意外と寄れる点にもあります 。焦点距離16mmの場合、0.25mまで被写体に近付けるので、実際に撮影してみると、思っているよりも近付けて驚くと思います。
パリは曜日によって場所は違いますが、色々な場所でマルシェが開かれています。今回の旅では、様々なマルシェを回ることも目的のひとつでした。こちらはエッフェル塔を見ながら買い物ができるマルシェで、朝早い時間に訪れたので買い物客も少なく、ゆっくりと買い物と撮影ができました。
写真のパン屋さんでは、ガレットとマドレーヌ、お土産用に砂糖を固めたようなお菓子を購入してから、写真を撮らせてもらいました。お店の商品や、お店の方を撮影する場合は、まず買い物をしてお店の方とお話をしてから、撮らせていただくようにしています。
このカットとは別に、お店の方のカメラ目線の笑顔のカットも撮影させてもらいました。旅先では現地の方とコミュニケーションを取って、それをカメラに収めると、帰ってからの想い出も、より色濃くなります。そんなときに、被写体に威圧感を与えないカメラのコンパクトさは、意外と大事なんですよね。
動きながらでも素早いAF
■撮影環境:F6.3 1/100秒 +0.7EV ISO400 焦点距離50mm WBオート0 ピクチャーコントロール:風景
この写真は、動いている2階建てバスに乗りながら撮影しました。セーヌ川沿いで、お店の準備をしているところでしょうか。筆者はいつもAFエリアモードをオートエリアAFにして、顔認識機能を使えるようにしていますが、このような顔がないシーン、もしくは顔以外にピントを合わせたいシーンでは、エリアモードはそのままで、タッチAFを使用して、ピントを合わせたい所をタッチしてピント合わせをして、シャッターボタンを押し込んで撮影しています。
カメラを構えて、液晶をタッチして、オートフォーカスが起動して、ピントが合って、シャッターボタンを押し込む……ここまでの作業で2~3秒でしょうか。そんなせわしない動きにもついて来てくれる、シャッターチャンスを逃さない、頼れるカメラです。
クリエイティブピクチャーコントロールで見たままから感じたままを描こう!
■撮影環境:F8 1/80秒 ISO2000 焦点距離50mm WBオート0 クリエイティブピクチャーコントロール:デニム
■撮影環境:F5 1/80秒 +0.7EV ISO1600 焦点距離16mm WB:オート0 クリエイティブピクチャーコントロール:ドラマ
一眼レフ時代からピクチャーコントロールには大変お世話になっており、ふんわり系、クール系など自分でカスタムして遊んでいたのですが、Zシリーズになって搭載されたクリエイティブピクチャーコントロールは、自分のイメージを体現できるとても楽しい機能なので、ぜひ使って頂きたいです。
本機にもZ 7、Z 6同様のクリエイティブピクチャーコントロールが搭載されており、iメニューから簡単に使うことができるので、オートやスタンダードばかりではなく、色々な色味や雰囲気を味わって欲しいです。
特に、古いフィルムのようなレトロなイメージになる「レッド」、青や紺色が画面内に多いときに使うと、アンダー部分がぐっと引き締まって印象的な画になる「デニム」、明暗を高くして、コントラストの強い劇的な画に仕上げてくれる「ドラマ」は、パリの街中でのスナップにとても似合いました。
海外旅行ではスリにも注意!
■撮影環境:F4 1/200秒 ISO800 焦点距離16mm WBオート0 ピクチャーコントロール:風景
パリはとてもスリの多い地域で、特におとなしくてお金を持っていそうな日本人は、ターゲットにされやすいと言われています。地下鉄はもちろん、買い物中やカフェでの休憩中に、不用意にバッグを自分の体の横や、手の届かないところに置くだけで、一瞬で無くなってしまうことも稀ではないと。そんなことで、楽しい旅行が台無しになっては悲しいですよね。
そして、私たちが特に気を付けなくてはいけないのは、カメラなんです。高値で取引ができるデジタル機器は、スリの格好の獲物です。また、首からカメラをぶら下げていると、観光客だとばれて、スリからターゲット認定されてしまうこともあります。
そんな事情もあり、筆者は海外に行くときは、カメラストラップはメーカー名の入っているものは使わず、サクラスリング を愛用しています。後ろから見てもスカーフをしているようにしか見えず、カメラ部分をコートで隠してしまえば、前から見てもカメラを持っているようには見えません。特に本機はボディーが薄いので、コートに隠すのも簡単でした。
この旅行で本機は、気軽に持ち歩けて、想い出を色鮮やかに描いてくれるカメラとして、大活躍してくれました。またこのカメラとともに、新しい旅に出かけたいと思います。このときは発売前だったので、機材はお借りしたもので撮影しましたが、発売日にはもちろん、自分の愛機として、ダブルズームキットを手に入れましたよ!
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