まるで水に潜ったかのような写真が撮れる!?水族館撮影テクニックをご紹介~レアな魚が盛りだくさん!北の水族館編~
はじめに
皆さんこんにちは。今年も暑い夏がやってきましたね。こんな時は冷房の効いた、水族館での撮影が心身ともにリラックスできてお勧めです。
日本には様々な水族館があり、皆さんの近くにも大なり小なり魚を展示している施設はありますので是非、Googleマップなどを活用して探してみてください。最近のGoogleマップは口コミや館内の写真なども見られますので、どのような雰囲気でどのような魚がいて、どんな撮影が可能なのか行く前から事前に予想が立てられますので、行かれる前には是非チェックされることをお勧めします。
筆者は今回、北海道に行く機会があり、北の水族館を巡ってきましたので涼し気な作品を見ながらモチベーションを高めてもらえると幸いです。
北海道には沢山の水族館があります!
今回旅した北海道には実に沢山の水族館があり、伺った水族館は付近で採れる魚の展示や土地の利を活用した展示など、それぞれにこだわりを感じられました。また、施設は古くてもスタッフのアイデアが光るとても興味深い展示方法で実に楽しく拝見出来ました。北海道という土地柄か、淡水魚が中心で特に鮭の展示は必ずと言っていいほどありましたね。北海道の水族館、お勧めです!
水族館撮影のポイント
まるで潜って撮影したかのような写真を撮影するには背景がとても重要です。水槽の水を変えたばかりの水族館は魚もクリヤーに表現できて良いのですが、水槽が汚れていたり背景が汚かったりする場合は、魚と背景の距離を離したり魚を大きく撮影したりすると効果的です。下の作例は前ボケと後ろボケを上手く活用しています。群れの中心にいる魚にピントを合わせると背景もボケていい感じになりました。
基本的に水族館内で撮影する際の設定は、明るいF値のレンズならISO感度は手動で400~800程度、暗い高倍率ズームならISO800~6400くらいが目安です。筆者の場合、WBは太陽光、記録画質はRAWで通常は撮影しています。RAW撮影でのメリットはあとで微妙にホワイトバランスを変更できる点と、PCでのレタッチがJPGに比べてやりやすい点です。
また、ISOオートやWBオートなどでも楽に撮影ができますが、あまりにISOが上がりすぎたり色がおかしい表現になったりする可能性がありますので、撮影したら都度写りを確認しましょう。
この水族館は北海道ならではの淡水魚、特に鮭の展示にこだわった博物館です。特に稚魚を年齢順に展示しているのは初めて見ました。この作例はアマゴの水槽にアマゴの稚魚が沢山泳いでいました。
標津サーモン科学館では毎年GWの期間、シロザケの稚魚の放流を体験できるイベントもあります。写真のように好みのグラスに稚魚を入れて放流を体験させてくれました。筆者は迷わず、絵になる?大き目のワイングラスをチョイスしました。そして魚の姿がよくわかるように高さを微妙に変えてグラスの中の魚と背景の北の大地を取り入れて撮影しました。
様々な水族館撮影テクニックあれこれ
ここでは水族館での撮影に便利なテクニックをご紹介します。こちらもシロザケの稚魚ですが、ガラスが痛んでいると背景に丸ボケを入れて奇麗に表現しようとしても、このような結果につながりますので注意が必要です。
また、ガラスが痛んでいるときなどはこの写真のように左右対称構図でアート的に表現しました。人工物をわざと取り入れて撮影すると良い結果になり易いこともあります。
こちらは水族館ではなく、有名な旭山動物園での作例です。アシカのプールはどの水族館でもそうですが、背景が青く海で泳いでいるような雰囲気です。水面のフェンスの揺らぎ模様が面白くアート的に表現出来ました。
最近の動物園も展示方法がとてもユニークで、まるでトンネルの中から覗き込んでいるような感じに撮影できました。
カバの展示もとてもユニークで楽しめます。
この水族館は滝つぼの下から魚を見られるというコンセプトで造られた水槽です。魚や水流の動きがとても激しいので出来るだけ速いシャッタースピードで撮影しました。飼育されている環境もとてもよく、魚も元気なので撮影中に……
魚の交尾活動かと思われますが、このような場面は実際にダイビング機材を背負って潜っていても出会えることはほとんど無いので驚きでした。
また、この水族館では驚愕の展示が!それは筆者が夢にまで見た幻の魚・イトウの婚姻色の展示でした。動画でも撮影しましたのでご覧ください。まるで川の中で潜って撮影したような表現が撮影できました。とても美しい婚姻色です。
この写真のように、背景に埋没林などを入れてみるとより印象的な作品につながります。
こちらは静止画でも撮影しました。この水族館は自然の川の水を利用しているので水も奇麗でなおかつ、ガラスも奇麗なのでとてもクリヤーで鱗の一枚一枚も奇麗に表現出来ました。
次に、北の大地ならではの氷の天使・クリオネ(ハダカカメガイ)の作品をご紹介します。カメガイの仲間は近所の海にも居るのですが、天使のような形のクリオネは寒い地域限定で実際にクリオネに出会うことは厳冬期の北海道で且つ、流氷の海に凍結防止用のレギュレターとドライスーツでダイビングをしなければならないので非常にリスクが高いです。
もちろんリアルで見ることも大切ですがそのような事が出来る人は限られますよね。しかし、水族館ならばどんな季節でも楽にクリオネに出会えますのでお勧めです。実は筆者の近所の水族館にも居ることを最近知りました!!
まずは北海道立オホーツク流氷科学センター内にクリオネの水槽があるという情報がありましたので行ってみると……
こんなに沢山のクリオネに出会いました!流石、紋別ですね^^このような撮影では連写することが多いのですがあとから撮影カットを確認してみると……
下の部分に捕食中のクリオネがいることを確認しました。可愛い姿とは言えず、まるでエイリアンのようですね。
また、沢山のクリオネの作品も良いのですが、下の作例のように1匹だけに狙いを絞った作品が筆者は一番気に入りました。この2枚の作品は水槽に結露でついた水滴が良い味を出していたのでそれをうまく取り入れて作画しました。
おまけで筆者の地元の水族館でもクリオネを撮影してみました。皆さんの近所の水族館でも出会うことが出来るかもしれませんよ。
水族館撮影にお勧めのカメラ機材
水族館撮影には最近のカメラならばどんなものでも撮影しやすいと思います。特にミラーレスカメラはピントも合いやすく撮影画像も確認しやすいので重宝します。レンズに関してはなるべく明るいレンズで撮影出来れば良いのですが、F値が暗いレンズでもISO感度を上げることで問題なく撮影できます。
また、被写体の近くまで寄れるレンズがあれば小さな魚でもピントが合いやすく、撮影しやすくなります。所有レンズの最短距離がどれくらいか事前に確認しておくことをお勧めします。この写真の様に3センチ程度の小さな魚を撮影するには、水槽にそれなりに寄れなければなかなか成功しません。
カメラ設定はISOオートやWBオートなどでも楽に撮影ができますが、使用するカメラによってはあまりにISOが上がりすぎたり色がおかしい表現になったりする可能性があるため、筆者はISOは手動、WBは太陽光、記録形式はRAWで通常は撮影しています。
また、水槽に写る反射を取り除きたい場合には、以下のような忍者レフやラバーフードなどがとても重宝します。館内撮影は水槽での撮影が主ですのでガラス越しでの撮影となります。レンズをガラスにぴったりと付けると反射なく撮影できますが、レンズを動かすことが出来なくなりますから画角が制限されます。その際、ゴム素材で出来たラバーレンズフードや忍者レフなどを使用すると良いでしょう。
フードにはそれぞれに特徴がありますが、現在の筆者のお気に入りはユニバーサルレンズフード(SMALLサイズ)です。このフードは長さが多少調節可能なので色々なレンズに装着することが可能です。
また、ガラスの反射をとるPLフィルターも効果的ですが、撮影角度に制限があり暗い屋内だとシャッタースピードがより遅くなるので不向きです。PLフィルターを使用するなら明るい場所での使用を推奨します。
混雑時など、水槽から離れて撮影する場合、じっくりとファインダーで水槽のガラス面の映り込みを確認して、自分や周りの建造物等ができるだけ目立たない角度で撮影します。場合によっては映り込みや水槽のフレームなどを逆に取り入れた場合も良い作品になることがありますので、映り込み・人工物等=悪いというイメージを捨てることも考えてみるといいでしょう。
さいごに
今回オリンパスのミラーレスカメラで撮影したものをご紹介しましたが、最新型のスマホでもびっくりするくらい奇麗に撮影できますので、水族館に遊びに行った際はぜひ気軽に撮影も楽しんでみてください。また、撮影の際は周囲の方々に迷惑をかける事がないようにご注意ください。少しでも邪魔になっているようでしたら一言挨拶や、場所を譲るように心がけていただけるとトラブル回避にもつながりますし、気分良く撮影できるかと思います。
■写真家:虫上智
1968年岡山県生まれ。高校を卒業後、写真家 緑川洋一氏に師事。地元のカメラ店で撮影業務などを学び2000年に独立。現在はスタジオ撮影、フォト講座、執筆、フォトコン審査、講演等を受け持つ。ライフワークでは心象風景、自然写真、水中写真を撮影。
日本写真家協会(JPS)会員、日本写真講師協会 認定フォトインストラクター、OM SYSTEMゼミ講師、フォトカルチャークラブ講師、フォトマスターEX(総合)一級