佐藤俊斗 × ポートレートVol.15|光で作り出す美しさを表現。スタジオ撮影編2
はじめに
気温も低くなり冬本番。街は一気に煌びやかなムードになりましたね。
この季節のロケ撮影は光が綺麗で優しい写真が撮れますが、現実的には寒さとの闘いで震えながら写真を撮ることも多いのではないでしょうか。
そんな時にもおすすめなスタジオ撮影。
今回は青の背景紙を取り入れて少しクリエイティブなイメージで撮影してみました。
以前、ご紹介したスタジオライティングのテクニックの続編として、今の季節にも最適なテクニックをご紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
曇り空ライティング
曇り空ライティングと聞いて、皆さんが思い浮かべる光はどのような光ですか?
強い日差しが直に当たるような硬めの光ではなく、曇り空から降り注ぐような柔らかい光ですよね。
では、どのように曇り空ライティングを作るのか解説します。
以前に雨の日ロケ撮影時の記事で軽くご紹介しているので、是非そちらもご覧ください。
使用したのは紗幕。
今回は3m×3mの紗幕越しに、大きなアンブレラを使用した2灯ライティングです。
ここで大事なポイントは大きいアンブレラを使用するということ。
サイズが大きいほど拡散する光も大きくなり、より柔らかい光質に。
そしてその光を紗幕越しから打つことで、さらに柔らかい光で被写体を照らすことができます。
こちらも以前のスタジオ撮影テクニックでご紹介した、「面光源」を使用したライティングテクニックです。
特に今回は、曇り空の中でも少し芯のある質感にするために、キーライトとして小さめの傘にもう一灯を被写体の斜め左前に追加。
顔の右反面に影をつくるようなライティングにしました。
この時のポイントとしては紗幕を使わず、小さめの傘を使用するということ。
そうすることにより、やや硬めで芯のある光でアプローチすることができます。
そして、配置したストロボと反対側の被写体近くに黒カポックを配置することで、より影が締まった印象になります。
このライティングで1番真っ先に考えるべきポイントは「影をどれくらい落とすか」。
これまでの説明にもあるように、曇り空ライティングの光は”柔らかく優しい質感”なので、のぺっとしてしまいがちですよね。
しかしここで硬めの光を追加することで、優しい質感の中にもコントラストが生まれ、影を締めることでより芯がある仕上がりになります。
大事なポイントは、被写体の顔に落ちる影にどこまで拘れるかどうか。
ライトの位置によっては、影の配分が多くなり過ぎてしまったり、光は綺麗であっても髪の毛の影が顔に写ってしまっていたり。
組む位置と被写体の顔の向き、顔に落ちる影を細かく意識する事で、写真の質はグッと上がります。
よく見落としがちな部分ですので、細かな部分まで拘ってみてくださいね。
モーションを意識する
モーションというフレーズ。
これはいわゆる動きや動作を表現する言葉のことです。
今回撮影している途中で、どこか「不完全」な写真の仕上がりにしたいなと思い立ち、途中からあえてモノクロでの撮影に変更しました。
ムード感のあるシックな落とし所を狙う。
いい意味でまとまり過ぎていない写真になるように、追加で入れたキーライトの光量を一段落とし、ブロワー(送風機)の風量を強くして髪の毛に動きをさらに出しています。
写真は映像とは異なり、見た瞬間のイメージで決まることがほとんど。
だからこそ、「より印象深い写真は何か」とよく考えるのです。
同じカメラ設定やライト位置、ほぼ同じセッティングでも、少しのアクセントでここまで印象を変えた写真に仕上げることができますよ。
光の芯を活かした艶ライティング
先程のライティングとは対照的に、艶のあるメイクでの撮影。
今度はモデルさんの要望もあり、肌の透明感を活かした美しいライティングで撮影しました。
僕が「美しいライティング」と聞いて思い浮かべるのは、光沢感や上質な光。
柔らかくてナチュラルな光よりは、やや硬めで芯のある光を作り出しています。
肌艶を出すライティングのテクニックは以前の記事でご紹介しておりますので、是非そちらをご覧ください。
今回もメインとなるライトにはアンブレラを付けた2灯を使用しました。
傘のサイズ、高さ、距離感を変えた2灯ライティングをベースに、ポイントとして髪の毛を照らすハイライトの光を追加。
ハイライトは、被写体の斜め後方から硬めの光を当てることにより、髪の毛にディテールとエッジを加え、より上品な質感にしています。
この時使用したものは、ソフトボックスやアンブレラではなく、光の方向性を狭くし、髪の毛にピンポイントで光が当たるようリフレクターを使用しました。いわゆる髪の毛のハイライト用に打った「点光源」です。
ここでのポイントは、いかに芯のある硬めの光を当てられるか。
配置にも少しテクニックが必要になってきます。
顔の横に光がポイントで当たってしまうと、少し不気味な見え方になってしまいますよね。
これも拘りの一つなのですが、写真をご覧いただければ分かるように、顔にはなるべく光を回し過ぎないように微調整して配置しました。
そして最も大切なのは肌の色温度と、ハイライトの色温度とのバランス。
最初はハイライトを入れずに撮影したのですが、想い描く光沢感や上質さに対してどこか物足りなさを感じました。
ハイライトを足すことでその上質さを表現し、よりムーディな雰囲気になっていますよね。
では、次の写真をご覧ください。
先程と全く同じ設定値で撮影したものですが、今度は編集時に色温度を変えて仕上げてみました。
全体的に暖色の雰囲気がよりムード感を醸し出していますよね。
これまでは編集のテクニックについては触れてこなかったですが、上記で説明した肌とハイライトの色温度のバランスも重要視しつつ、編集時に感じる感覚にも対応できるよう、いかに撮って出しのクオリティを高く出来るかがとても大切です。
これは当たり前ですが、クオリティが高ければ高いほど幅広く調整ができます。
例えば、撮影中はこう感じたなと思ったとしても、ふと写真を見返した時にもう少し明るく撮ればよかったな、コントラストを付けたかったな等、思うことはありませんか?
なので、あえて今回は撮影時に狙った色温度と編集時に感じた色温度の2パターン紹介してみました。
皆さんはどちらがお好きですか?
おわりに
今回は、ライティングテクニックの続編として細かな拘りをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
曇り空ライティングと芯のある艶ライティング。
それぞれテーマやイメージに合わせて光を選択することが大切で、いかに自分なりの拘りを表現していけるかが最も重要なポイントです。
面光源と点光源の使い分けや、写真のアクセントとなるポイント光など、皆さんそれぞれの表現と拘りを見つけてみてくださいね。
■モデル:池田穂乃花
■写真家・フォトグラファー:佐藤俊斗