静止画だけじゃもったいない!ソニーαで動画撮影に挑戦 Vol.1 ~撮影編~
はじめに
ソニーαシリーズはフルサイズミラーレスをより身近にしてくれました。
写真を撮る上で「レンズのオリジナルの焦点距離での撮影」、「浅い被写界深度」、「高画素」、「高感度耐性」に魅力を感じて「フルサイズ」を選択している人も多いのではないでしょうか。
実はこのメリットは写真だけのものではなく動画撮影においても魅力的な要素だったりします。
カメラについている赤い丸いボタン、かなり目立ちますがこのボタンを使っている人はどれくらいいるでしょうか?このボタンを押すだけで動画撮影が始まるのですが、写真撮影オンリーで動画はパスという人も多かったりします。
ここではソニーαシリーズを使った動画撮影についての解説をスローペースでしたいと思っています。
動画はちょっと難しそう…動画用の機材を揃えないとダメなのでは…?という人でもまずはRecボタンを押すところから始めてもらえればと思っています。今使っているスチル撮影の機材をそのまま使って動画撮影に挑戦してみましょう。
スチルとムービーの違い
まず、写真と動画は何が違うのか?というお話しからスタートしていきます。
簡単に言えば実はどちらも「写真」なのですが、写真は1枚で完結したものであり「瞬間」を写し取ったものです。動画はその写真の「連続」であり簡単に言えば「連写」しているのと同じです。
つまり、連写したものを連続して再生すると動画になります。
1枚だけシャッターを切った写真と連写した写真を並べてみました。
連写で撮影した方は動いていますね。これが「動画の原理」です。
しかし、よーく見ると…連写で撮影した方は確かに動いているけどちょっとぎこちない動きをしています。普段見慣れている動画はもっと滑らかですよね。これは1秒間に何枚の写真を再生しているかで動きの滑らかさに影響してきます。
上記の写真と連写映像はα7 IVで撮影したものですが、α7 IVの連写性能は「最大約10コマ/秒」ということなのでこの連写映像は1秒間に10枚の写真が再生された動画ということになります。
まずは1秒間に10枚だとぎこちないということがわかりました。
では1秒間に何枚の写真があれば「スムーズに見える」のかを調べてみましょう。
スムーズに見える映像の規格は一般的に大きく分けて3つあります。
左から
・1秒間に24コマ(映画などでよく使われる)
・1秒間に30コマ(テレビなどでよく使われる)
・1秒間に60コマ(スポーツなどより滑らかな映像が必要なシーンで)
この3つの規格が主流となっています。この1秒間のコマ数のことを「フレームレート」と呼びます。
よくカメラの箱に「4K60p」のような文字を見かけるかもしれませんが、これはこのカメラで「4Kで60コマ秒の映像が撮れます」という意味です。
フレームレートが多い方が滑らかだということがわかったので、この中では「60コマ/秒」が一番スムーズということになりますね。
これ、写真で考えるととんでもない連写速度ですよね。
どうして動画だとこんなに早い連写ができるのかというと、簡単に言えば写真よりも動画は画素数が少ないからです。
普段テレビで見ている映像は「フルハイビジョン」と呼ばれる規格で動画を撮らない人でもよく耳にする言葉では無いでしょうか。
このフルハイビジョンで必要な画素数を調べてみると「横1920×縦1080」となっています。画素数は縦と横のピクセル数を掛け算すると算出できるので…フルハイビジョンに必要な画素数は「2,073,600画素」(約200万画素)となります。
スチルの世界では1億画素の話も出ているのに動画では200万画素あればとりあえず事足りてしまうんですね。
α7 Ⅳが3300万画素あるのに対し、フルハイビジョンでは約200万画素。
実際にはカメラの中で複雑な処理が施されて動画になっているのですが、写真と比較するとかなり情報量が減らせるので連写速度が上がるのも納得ですね。
動画は写真の連続(連写)ということは映像の中から写真も切り出すことができます。
フルハイビジョンで撮影した映像を切り出すと約200万画素の写真を切り出すことができます。
約200万画素というと「L判」や「ハガキサイズ」であれば画素数は足りるので動画から写真のプリントも楽しめます。ただし動画の比率は16:9と通常よりも比率が長いので注意が必要です。
せっかくなので最近よく聞く「4K」ってフルハイビジョンと比べてどれくらい差があるのかも調べてみましょう。フルハイビジョンと違う点は「画素数」です。
フルハイビジョンが「横1920×縦1080」に対し4Kは「横3840×縦2160」となります。
4Kのピクセル数を計算すると…「8,294,400画素」(約830万画素)となります。
一気に写真に近い画素数になりましたね。800万画素もあればA4サイズや四切サイズでも画素数は足りているということになります。
画素数が増えるということは処理にかかるカメラのパワーも必要になってくるということになるので4K撮影では制限のあるカメラも出てきます。カメラだけではなく4Kの速度に対応したメディアも必要となってくるのでメディアは速度が速いものを買っていて損はありません。
ちなみにαシリーズで最も高画素な動画を撮影できるのはα1の8Kとなります。
8Kに必要な画素数を調べてみると…「横7680×縦4320」となりこれを計算するとなんと「33,177,600画素」(約3300万画素)もあります。α7 Ⅳの画素数に追いついてしまいましたね。写真と動画の境界線ってどんどんなくなって来ているのがわかります。
ムービーは特別では無い
写真と動画の違いと動画の規格について簡単に解説してみましたが思っていたよりも写真と動画って似ている部分が多いかも?と思った人もいるのでは無いでしょうか。
動画も写真と同じく調べれば調べるほど規格や専門用語が無限に湧いて出てくるのですが…ここでは「まずは動画を撮ってみる」ことを優先します。
動画を撮影するには2つ方法があります。
「写真モードでRecボタンを押す」もしくは「動画モードでRecボタンを押す」です。
なにが違うのかというと、写真のついでに動画を撮るかどうかです。
動画モードにすると普段見慣れないメニューになり、画面の表示もちょっと変わりましたね。
今回はひとまずスチルモードの状態でRecボタンを押してみましょう。
Recが始まると上下が切られて「スチルの比率の3:2」から「動画の比率の16:9」になりましたね。
ムービーモードでは最初から16:9の比率で映像を見ることができるのでより厳密な構図が可能となります。
スチルモードからRecボタンを押して動画の収録が始まりましたが動画のシャッターチャンスっていつなのでしょう?写真は瞬間を記録するのに対し、動画は瞬間の連続を記録することができます。風景撮影であれば風に揺れる葉や川の流れなどを連続した動きで表現できます。映像の場合はそれに加えて「音」も収録できるのでより現場の臨場感が伝わってきますね。
まずは動画を撮るぞ!ではなく写真を撮影した後にRecボタンも押してみようからスタートしてみてください。写真と同じものを動画でも撮影してみることが大切です。
仕上げの色味に関してもまずはスチルの設定のままで全く問題ありません。
最初に動画の原理は連写と同じと解説したように、動画を撮影するときは「動く写真」を撮る感覚で全く問題ありません。カメラワークが…というのは気にすることはなく、三脚にカメラを乗せて写真を撮った後にRecボタンも押してみる、これが大切です。
三脚などに固定してカメラを動かさないように撮ることを「FIX(フィックス)」と呼びます。
フルハイビジョンの撮影であれば最新機種でなくても搭載されたカメラがほとんどで、最近の機種であればほぼ全ての機種で4Kで撮影できますが一般的な再生環境などを考えると最初はフルハイビジョンで大丈夫です。
動画を撮影したことがないと動画を特別視してしまいますが、一度撮影してみるとそんなに難しく考える必要もないというのがわかります。動く写真を意識して気軽にRecボタンを押してみましょう。
せっかく動画を撮影をしたのなら鑑賞もしたいですね。
YoutubeやSNSにアップ、の前に最も簡単なHDMIケーブルを使ってテレビ画面で映像を鑑賞してみましょう。通常よりも大きな画面での動画鑑賞は感動ものです。
まとめ・スチルの延長線上としてのムービー
今まで動画を撮影したことがなかった、動画はすごく難しそう、苦手意識がある、すごくわかります。写真をメインで撮影しているとついつい写真だけで終わってしまうことがあります。
ふと家に帰って写真を整理していると「動画も撮っておけばよかったかなぁ」と思うことも多いので悩んだときはまずRecボタンを押すクセをつけるようにしています。
写真に向いている被写体と動画に向いている被写体・シーンは厳密には違いますが撮影を続けていると動画で映えそうだなと思うシーンがわかってきます。まずは「動きのあるもの」を意識してみるといいでしょう。カメラを動かさなくても被写体が動いてくるのでカメラワークを気にせずとも動きのある映像が自然と撮影できます。
今回は三脚に固定してRecボタンを押して撮影した動画を背景の音楽に合わせてカットをつなげたものを制作してみました。難しく考える必要はなく写真と同じく目を引かれたものに向けてRecボタンを押すだけで簡単に動画は撮影できます。
このVol.01ではまずはRecボタンを押すところからのスタートでしたが、次回ではより映像を作品として昇華させていく手順や方法について解説していきます。写真だと表現が難しかったことももしかしたら動画であれば表現できるかもしれません。
新しい選択肢のひとつとして動画撮影に気軽にチャレンジしてみてください。
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。