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(上)【氷の宙ぶらベル】 ■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:180mm F3.5L マクロ 絞り:f11 シャッタースピード:AE フィルム:フジクロームベルビア 撮影地:長野県武石村 |
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幼い頃に遊んだ近所の小川が、水に対する原体験なんです。
もともと写真に限らず絵画・映画・文学とさまざまな芸術の分野に興味があった先生ですが、写真に関しては、まず理論を学んでみようと思い、現代写真研究所に入所したのが写真を始めるきっかけとなりました。
ところが、そこでは理論より撮影・現像・引き伸ばしという実習が中心で、理論的な講義はほとんどなく、やむを得ずカメラを手にすることになり、写真家としての第一歩がはじまりました。
やがて修了展を制作することになり、ドキュメンタリー作品をやってみたいと考えていた先生は、その頃に自宅近くの川が周囲の宅地化にともない、汚染されていたのを目にし、それをテーマに撮影することを決意されます。
「その川は、私が幼い頃に魚獲りや川遊びをした思い出深い川でした、長い年月の間にすっかり汚れてしまった川の実態を、多くの人に知ってもらいたくて、自宅のある中流部から源流部までをさかのぼり撮影をすることにしました」。
撮影を始められた先生は、中流部は汚染がかなり進んでいたのに比べ、源流部はまだまだきれいな透明の水が流れている姿に感動を覚えたのです。そこで、考えを改めて汚染の状況をアピールするよりも、残された貴重な清流を人々に知ってもらうことの方が自然保護につながるのではないかと思い、その後は水に対する見方が変わり、水そのものや水のある風景を被写体とするようになりました。
中でも、冬の自然がもたらす雪や氷の造形の美しさに先生は、心を奪われていきました。
その頃の撮影は、すべてモノクロフィルムで、現像から引き伸ばしまで一人で作業されていましたが、やがてモノクロでの表現に限界を感じるようになり、それ以降は、大半をカラーフィルムで撮影するようになりました。「モノクロ時代に培った光を生かす手法は、貴重な経験となって、その後の作品づくりに大変役に立っています」。
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