カメラのキタムラ
Vol.44 2003 SPRING
特集 写真家 沼田早苗氏  
風景写真として月の魅力を最大限に表現
月景色写真家 森 光伸
 古来より現代にいたるまで、日本人にとって月はなくてはならない存在でした。ある時は暗闇を照らす貴重な照明手段として、またある時には歌や物語の中で心情描写に用いたりと、私たちと月とは切っても切れない関係を続けてきました。今回はとにかく月が好きで、その魅力を20年以上にわたり写真で表現して、作品づくりをされている森光伸さんをご紹介いたします。
桜を語る ■カメラ:マミヤM645 レンズ:セコールC210mm F4 絞り:f22 
シャッタースピード:1/4 フィルム:フジクローム(RVP) 撮影地:山梨県韮崎市
 森光伸さんは、子供時代を天草地方の御所浦島で過ごされました。日が沈むとあたり一面は闇夜となり、非常に心細くなりました。そんな時に月明かりに照らし出される風景はとても頼もしく目に映っていたとか。以来、大人になり暮らす場所が変わっても、淋しい気持ちになった時には、いつも島で見ていたやさしい月の光や、力強く夜空に燦然と輝く月の姿を思い出し、いつしか月の魅力の虜になったそうです。
幼人とは違う自然風景写真を撮りたくて、大好きな「月」にこだわりました。
 高校生の時に、森さんのお兄さんが持っていたカメラを借りて風景写真を撮ったのが写真のはじまりでした。やがて就職をして初めてのボーナスで一眼レフカメラを手に入れたのが、最初のご自分のカメラになり、年に数回の山登りでの山岳写真や、旅行先での自然風景写真を10年近く撮り続けていきました。
 30歳位のときに、自然風景写真の中でも特に山岳写真では多くの人がいい作品を残していると感じたのがひとつの転機に。 「他の人とは違う自分独自の自然風景写真を撮影したいと思い、夜の山の表情を撮りはじめてみました。しばらくして自分の作品をあらためて眺めてみると、月が写っていることが多いのに気づいたのです。自分でも知らず知らずのうちに、幼い頃に天草の島でよく見ていた『月』を思い浮かべて撮影していたことを知り、自分にとっては月が特別な存在であることを思い知りました」。
 そこで「これからは月のある景色の作品づくりに挑戦してみよう」と思い、ここから『月景色』写真がはじまります。

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