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【森】この撮影で注意したことは、自分の足跡がつかないように遠回りし、予定したポジションに行ったことだ。無造作に歩くと良いアングルを無駄にしてしまう。予測して撮影する癖をつけることだ。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:A645 150mm F4 絞り:f22 フィルム:RDPII C-PLフィルター 三脚使用 撮影地:青森県蔦温泉 |
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感情に左右される人間を撮るよりも、反応が正直でストレートな自然に魅力を感じました。
―――丹地先生の作品には「水」「森」「花」などの自然風景を取り上げた作品が数多く見られますが、最初から自然風景を被写体として撮影されていたのでしょうか?
私はフリーのカメラマンになる前は、出版社の写真部に勤めていました。その頃はさまざまなジャンルの写真を撮っていたので、その中には当然、人物も含まれています。
しかし人間という生き物は、喜んだり悲しんだり怒ったりと、さまざまな感情の変化が起こります。もちろん私自身にも人としての感情がありますので、撮影していてもいろいろな面で相手との考え違いや行き違いが生まれてしまいます。そうすると、なかなかいい写真を撮ることができないんです。やがて、そのようなことが煩わしくなって、人物写真というものから遠ざかっていったのです。
しかし、人物写真の中でも伝統工芸職人を撮りつづけていた時期には得るものがありました。彼らは、いわゆる人間国宝とかいうものではなく、私たちのごく身近にいる職人さんたちです。
普段からあまり写真を撮られることのない方たちだったこともあり、皆さんとても喜んでくれました。いろいろと話をしていますと、職人さんたちの言葉から、彼らが長い歴史の中で、自然から多くのことを学んでいたことを知ったのです。
そのようなこともあり、徐々に自然風景写真を撮ることが多くなっていきました。人間に比べると自然は正直です。時には自然にも裏切られることはありますが、そこがまた魅力の一つでもあるのです。
―――先生の自然風景作品の中でも、川や湖などの水を取り上げたものが多くありますが、特に水には思い入れがおありなのでしょうか?
私は広島県の福山出身なのですが、小さい頃から、近くの川で水の中に潜っては魚捕りをして遊んでいました。その頃の水の中で遊んだ面白さや気持ちよさが記憶として今でも残っているようで、撮影していても自然と足が川へ向かってしまいます。
そして、川があるということは、そのそばには森があるということなのです。森と川は人間にとって、心が落ち着く環境だと思います。特に私は、誰もいない森や川の自然が大好きです。そのような中に一人でいると、撮影にすごく集中できるんです。
でも、たまにカメラを構えていると、アマチュアの方に「雑誌で拝見しました」と、声をかけられることがあります。無視するわけにもいかないので、ファインダーを覗かせてあげたりと、にわか写真教室がはじまってしまいます。本当のことを言うと、気が散ってしまうんです。だから、撮影中の私を見かけても、なるべく声はかけないでください(笑)。
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