写真展の額装も作品テーマに合わせる。 作品の展示方法は普段から考えておく必要があります。
――先生の写真展では作品の展示方法も魅力のひとつで、常に新しい手法で表現されています。アマチュアの方が作品を展示する際のアドバイスがあればお聞かせください。


 先日の銀座・和光での仏像写真展「極楽園」では“襖”を意識して展示しました。それは両面から観られることにポイントを置いたもので、壁面に掛けるのではなく、天井から吊るして展示したのです。さらに、プリントも阿波和紙を使用しました。ライティングも作品全体にフラットにあてるのではなく、作品の中のポイントにあてる。それにより金色の見え方が変わり、それぞれの仏像が持つ魅力を強調できたのではないかと思います。
 アマチュアの方でも作品を展示する時は、ピンで留めて展示するよりは額縁に入れた方がいいです。さらに額縁もテーマに合わせて考えてみてください。展示方法や額縁のイメージをつくるのには、日頃からいろいろな展覧会や美術展などへ足を運び、展示方法を観て参考にするのもいいと思います。
 和風にするのか洋風なのか。近代的な感じにするのかクラシック風なのか。普段から写真を撮ることだけではなく、作品をどのように見せたらいいのかということも考えておく必要があります


朝日が山肌を照らすと同時に湖面に映り込んだ戸隠連峰。うっすらとかかった霧がゆっくりと動いている。日本の美しさを実感した。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ4×5 レンズ:ローデンシュトック150mm シャッタースピード:1/2秒 絞り:f32 フィルム:ベルビア 撮影地:長野 戸隠村鏡池

 

たくさんの人が写真に興味を持って、
写真を理解するのは非常に大事なこと。
――『みんなで新しい写真体験を!』のコンセプトの下に、日本一のアマチュア写真愛好家クラブをめざし「NPO法人 フォトカルチャー倶楽部」が設立されました。この組織は写真を通じて「社会貢献」「文化貢献」「環境保護貢献」の活動にも力を入れています。こうした会員組織についてご意見やアドバイスをいただけますか?

京都の町中の色づきはこれからというのに延暦寺の周りはすっかり晩秋の気配。小雨の後、雲の合間から光がさした一瞬。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ4×5 レンズ:フジノンT400mmシャッタースピード:1/60秒 絞り:f8 フィルム:プロビア 撮影地:京都 比叡山


 たくさんの人が写真に興味を持って、写真を理解するのは非常に大事なことです。難しく考えるのではなく「撮ること」「発表すること」などをもっと身近なものにしていくことはいいことだと思います。写真に触れる、それも広告写真ではなく、自分たちが撮った写真を発表し合えたり、様々な情報交換ができる組織になり、写真を撮る人も、その写真を観る人も含め、より多くの人たちが気軽に参加できる場や機会を提供して欲しいと思います。



作品を観ることで「心が癒される」「刺激を受ける」など、
写真にはいろいろな力があると思います。
――写真には人を癒したり元気にしたりする力(写真療法)があると言われています。三好先生の「楽園」をテーマに撮影された数々の作品に、観る人は心を癒されてきました。こうした写真の持っている『力』については、どう思われますか?


 以前は写真とは「報道」のためのもので、極端に言えば『写真=報道写真』という認識がありました。ところが現在は写真というものは、自分で撮って楽しむ、他人が撮った写真を観て癒される。また、その作品から刺激を受けるなど、いろいろな効果や用途が見出されているように思います。写真は手軽に撮って楽しむことができる一方で、優れた写真は美術品にもなるという幅広い面白さと大きな力を持っていると思います。

――本日はお忙しいところありがとうございました。


もみじの枝にひっかかった松葉がおもしろい光景をつくり出している。寺の裏庭で見つけたシーンだが、もみじの葉の透けた様子を強調できるよう、軒下の暗い場所をバックに選んだ。もみじと松葉という意外な組み合わせが、これは何だろうと、人の心をひきつける。
■カメラ:リンホフマスターテヒニカ4×5  レンズ:フジノンT400mm  シャッタースピード:1/8秒 絞り:f11 フィルム:プロビア 撮影地:京都

 
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