高校を卒業して東京の印刷会社に就職しました。そこでは2年間働きました。働くことがすごく楽しくて、その間は写真のことは忘れていました。しかし、辞める半年前くらいから「このままでいいのかなぁ」という気持ちを持つようになっていました。「やはり自分がやりたいことをやりながら生活をしたい」という思いが強く、自分に何ができるのかを考えた時にたどり着いたのが『写真』でした。そこで初めてプロカメラマンになることを決心しました。
プロカメラマンになるには、まず写真を撮らないといけない。しかし、国内の風景を撮影しているプロカメラマンはたくさんいましたので、国内ではなくて海外での撮影を意識しました。海外を冒険してみたいという願望もあり、最終的に『カナダ』に決めて、100万円を持ってカナダへ向かいました。それが全ての始まりでした。
――カナダ各地を撮影されて、特に気に入られたところはありましたか?
カナダ西側のバンクーバーから、東の大西洋側を目指して撮影を始めたのですが、撮影するには何か“テーマ”が必要だと思っていた時に出会ったのが『プリンス・エドワード島』という小さな島でした。今では「赤毛のアン」の舞台として有名ですが、当時はまだ日本には紹介されておらず、私はその美しい風景がとても気に入り、帰国するまでそこで暮らしました。
日本に帰ってきてからは、アルバイトをして、お金が貯まるとカナダへ撮影に行くということを繰り返していました。最終的には再度プリンス・エドワード島に一年間滞在しました。その後、それまでに撮り貯めた作品で、1998年に新宿ニコンサロンで初めての写真展『ある日、凪ぐ時』を開催することができたのです。2000年には初の写真集『プリンス・エドワード島〜世界一美しい島の物語〜』も出版しました。
――カナダ以外ではヨーロッパ各地を訪れていらっしゃいますが、カナダでの撮影の違いなどはございましたか?
自分の中では、一つのテーマでの写真展開催と写真集出版を節目として考えていました。カナダに関しては自分なりに納得するまで撮りましたので、次はもっと幅を広げたいという思いがあったので、「ヨーロッパ」を選びました。ヨーロッパはどこを撮っても“絵”になります。だからこそテーマが必要になります。それは我々プロカメラマンはもちろん、アマチュアカメラマンでも同じことです。テーマを決めることで、風景の見え方が変わってくるはずです。今まで見過ごしていたものが見えてきます。気にならなかったものが気になりだします。そうすることで撮りたいものが、よりはっきりとします。やはり、ヨーロッパでもカナダと同様、田舎の素朴な風景に魅力を感じて撮影していました。 |