何気ない瞬間が1枚の写真作品となる、ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4
はじめに
こんにちは、フォトグラファーの鎌田風花です。
今回は2024年9月27日発売のNIKKOR Z 50mm f/1.4についてお話しします。NIKKOR Z 35mm f/1.4が登場してから約2ヶ月後に、今度は50mmの登場。ワクワクが止まりません…!Nikon Creatorsとしてはレンズラインナップが広がっていくことが嬉しい限りです。
前回レビューしたZ 35mm f/1.4の記事もぜひ下記よりご覧ください。
同じf/1.4とは言え、もちろんレンズや画角が異なることで印象や使い方も変わってきます。今回も作例を多めに見ていただきつつ、解説をしていくので最後まで読んでいただけると嬉しいです。
NIKKOR Z 50mm f/1.4の使用感
Zシリーズの50mm単焦点レンズは、Z 50mm f/1.8 S、Z 50mm f/1.2 S、Z MC 50mm f/2.8、そして今回のZ 50mm f/1.4が加わり計4本となりました。同じ焦点距離のレンズでも写りや写真全体の雰囲気が変わります。見た目が近いf/1.8 Sと外観の比較をしてみましょう。
重さやサイズ感はほぼ同等で、フィルター径も同じ62mmです。見た目で大きく違うところはコントロールリングとフォーカスモード切り替えスイッチの有無になります。f/1.4はフォーカスリングとコントロールリングが付いていて、コントロールリングは絞りや露出補正などカスタム設定を行うことができるので、よく使う設定を割り当てておくと便利です。
見た目の高級感はSラインのf/1.8にも引けを取らず、2本を並べておくと取り違えるということもしばしば。今回カメラは主にZ6III、 Z 7IIと一緒に使いました(一部Z f)。どちらもグリップがしっかりしているカメラなので、f/1.4でありながらコンパクトな50mmを付けるとバランスが良く安定感があり、長時間持っていても疲れにくかったです。コンパクトで軽量なサイズ感はフットワークも軽くしてくれます。
Z 50mm f/1.8 Sと写りの比較をしてみます。
こちらは、Z 50mm f/1.4のレンズで絞り値をf/1.8にして撮影した写真です。
同じ画角であるZ 50mm f/1.8 Sで撮影した写真の一部をトリミングして並べてみます。
微妙な違いではありますが、ピント面の明瞭感はZ 50mm f/1.8 Sの方が高いように思います。しかし、例えばポートレートだと肌感の描写も大切で、その場合Z 50mm f/1.4の方が滑らかな印象です。撮りたい被写体に合わせてレンズも変える、という使い方もおすすめです。
50mmという画角
ズームレンズを持っていて、次の1本は「単焦点レンズが欲しい」と思ったとき、普段使いしやすい35〜50mmの焦点距離のレンズを検討される方は多いのではないでしょうか。私自身も最初の単焦点レンズは50mmでした。当時は学生だったので、価格やサイズ感を重視して購入したのですが、単焦点レンズを購入したことで被写体との距離の取り方や構図などを意識するようになり、とても勉強になったのを覚えています。
50mmという画角は広角すぎず、望遠すぎない、被写体との程よい距離感を保ってくれる画角だと認識しています。特にポートレートはコミュニケーションを取るなど、距離感を大切にしたいシーンが多いので、より自然体な様子を写す時は50mmレンズが重宝します。
広角よりも画角が狭い分、不必要な情報を省くことができるので、印象的な切り取り方をするのにも向いています。
一緒に遊んでいる途中で切り取ったワンシーンです。50mmは程よい距離感で、自然体な様子を切り取ってくれます。
室内は広角で撮ってしまうと生活感が出やすく場合によっては雑然としてしまいますが、50mmだと不要な部分を省くことができるので、より写真で伝えたいメッセージが伝わりやすくなります。何かを訴えている眼差しが印象的だったので、日の丸構図で、色の情報量も減らしたモノクロで強調しました。
どちらも開放F値にて撮影しています。被写体を際立たせてくれる周囲のとろけるようなボケ感が美しいです。
35mmと50mmという画角は好みが大きく分かれると思います。前回の記事では35mmをご紹介しましたが、どちらにも良さがあり、撮りたいシーンによって使い分けています。35mmだと画角が少し広いな、と感じる方は50mmが向いているかと思います。
柔らかなボケ感と立体感
特徴のある柔らかなボケ感だと感じました。ですが、ピント面が甘いわけではなくフォーカスしている部分の解像感は十分あります。
後ろの花は大きくボケていますが、ピントの合っている部分は花弁の質感が分かるほど描写されています。また色乗りもよく、本来の被写体が持つ色をナチュラルに再現してくれています。最短撮影距離の0.37m付近で撮影しています。
彼岸花を少しハイキーに、キラキラ感を表現したかったので木漏れ日の玉ボケが背景になるように、ローアングルで撮影しています。彼岸花は彩度が高く、かっこいい雰囲気の植物ですが、少しハイキーに撮影すると優しい印象になります。
このレンズは、光の取り込み方によっても描写の雰囲気が少し変わるように感じます。光の写り方が綺麗なので、逆光〜半逆光で開放F値にて撮影すると被写体を包み込むような柔らかいボケ感が際立ちます。
前景ボケと背景ボケにより被写体から少し離れている状態でもしっかりと立体感を感じました。何気ない瞬間の切り取りがお気に入りの写真になる、このレンズを使っていてそんな風に感じる写真がたくさんありました。撮り手の撮影意欲を掻き立ててくれるレンズです。
ポートレート撮影にもおすすめのレンズです。柔らかく大きなボケ感で被写体を際立たせ、肩肘張らずに使えるこのコンパクトさは相手に圧迫感も与えないので、より自然体な姿を写すことができます。
このレンズだから撮れるもの
このレンズ以外のZ 50mmであればもっとシャープで明瞭感のある描写だったと思いますが、個人的にはこの夕暮れのドラマチックなシーンは柔らかさを出したかったので、光が拡散されているような写り方がお気に入りです。F1.4で撮ると周辺減光が目立つこともありますが、ここでは真ん中に目線を持っていくためのアシスト的な役割をしてくれました。
ふわっとした雰囲気はありつつも、服の細かな柄はきちんと描写され、黒潰れも起きていません。開放F値での逆光撮影時は、フリンジやフレアが発生することもありますが、私はそれもこのレンズの個性だと思っていますし、印象的な表現の味方になることもあります。
こちらも同じ場所で撮影した写真です。西陽が当たる猫じゃらしがあまりにふわふわと柔らかそうで、思わず撮った1枚なのですが、ピント面の緻密さとボケ感の柔らかさどちらも良いとこ取りをできたように思います。上の写真も含め、このレンズで撮って良かったと感じた瞬間でした。
安心感のある描写力
開放F値では柔らかな印象ですが、もちろん絞れば解像度もバッチリです。
遠くの鉄塔まで解像されていて、Zレンズを使っている安心感があります。絞れば周辺減光も抑えられます。撮影者側の使い方によって1本のレンズで幾通りの表現方法が生まれるところに面白さがあります。
レンズは開放値だけで撮るわけでもなく(私は絞り開放で撮るのが好きですが…!)、特に風景などは絞ることも多いので、絞った時の解像度や描写力もレンズを選ぶ際の大切な判断材料になります。その点もこのレンズは信頼できると感じました。
さいごに
写真全体の雰囲気を柔らかに表現しつつも、見せたい部分ははっきりと。このレンズにはそんなイメージを持っています。光の捉え方が繊細で、ふんわり感もメリハリ感も表現でき、写真の中に閉じ込めたいその場の空気感を一緒に写してくれます。私自身は日常撮影でも作品撮りでもいろんなシーンで使いたいなと感じました。
Z 50mmが4本ある中で、どのレンズが一番良いということではなく、どのレンズにも推しポイントがあります。自分が写真でどんな風に表現したいかによって選ぶレンズは変わってくるので、ぜひご自身が好きな写真の雰囲気を考えながらレンズ選びをしてください。普段はSラインを使っているけど、違う雰囲気で写真が撮りたい!という方にもおすすめですよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
■フォトグラファー:鎌田風花
兵庫県在住。一般企業への就職を経て2017年よりフォトグラファーとして活動。ナチュラルで透明感のあるポートレートや風景写真を得意とし、家族写真の出張撮影や広告撮影、写真セミナーの講師などを務める。
近畿日本鉄道「わたしは奈良派」広告掲示(2023年春/夏)その他カメラ、レンズのパンフレット撮影など。Nikon CP+ステージ登壇(2022年/2023年/2024年)