サムヤン AF 75mm F1.8 X レビュー|超軽量コンパクトなXマウント用中望遠AFレンズ
はじめに
今回紹介するのは富士フイルムXマウント用の中望遠レンズ、サムヤン「AF 75mm F1.8 X」です。2023年5月に発売なったばかりの新しいレンズで、フジ純正レンズには無い焦点距離75mm(35mm換算で112.5mm相当)の大口径レンズです。焦点距離75mmで、F1.8の明るい「AF 75mm F1.8 X」レンズの気になるスペックとその写りをご紹介します。
「AF 75mm F1.8 X」の基本スペックと魅力
サムヤン「AF 75mm F1.8 X」のセールスポイントは、絞り開放値F1.8の明るい大口径中望遠レンズでありながら、非常に小型で軽量なところです。小型軽量なレンズ筺体は、同じく小型・軽量な富士フイルムのミラーレスカメラとのバランスが良く、富士フイルムユーザーにはおすすめできるレンズです。
今回は2023年6月に発売なったばかりの小型軽量ボディ、FUJIFILM「X-S20」との組み合わせでいろいろなシーンを撮影してみました。今回のボディとレンズの組み合わせでは約750g程度の重量しかなく、非常に楽しく撮影をする事ができ、魅力的な組み合わせであると実感しました。
サムヤン「AF 75mm F1.8 X」の仕様
焦点距離 | 75mm(35mm換算112.5mm) |
レンズ構成 | 9群10枚 |
開放絞り | F1.8 |
最小絞り | F22 |
フィルター径 | 62mm |
絞り羽根枚数 | 9枚 |
最短撮影距離 | 0.69m |
最大撮影倍率 | 0.13倍 |
手ブレ補正 | なし |
大きさ | Φ70.0×69.3mm |
重さ | 257g(レンズキャップ・フードを除く) |
対応マウント | 富士フイルムXマウント |
発売 | 2023年5月 |
サムヤン「AF 75mm F1.8 X」はオートフォーカス駆動にステッピングモーターを採用しています。オートフォーカス速度は静かで正確で速く、快適に撮影を楽しむことができます。
またレンズ構成は9群10枚で、2枚のHR(高屈折)ガラスと3枚のED(超低分散)ガラスを使用するなどし、画像の全領域で高い解像度とコントラストを実現しています。
カスタムスイッチは「M1」と「M2」に切り替えができ、「M1」の状態でフォーカスリングは通常のピント合わせ操作(マニュアルフォーカス)として使用できます。「M2」には「プリセット絞り機能」を搭載しています。これにより動画撮影時に、カメラ側からの絞りコントロールによるノイズや振動を感じることなく、よりスムーズに被写界深度をコントロールすることができるようになっています。
レンズとは別に、今回使用したFUJIFILM「X-S20」について少し紹介したいと思います。「X-S10」の後継機として登場したモデルで、大容量バッテリーを採用することで従来機で弱点だった撮影可能枚数の少なさ問題をクリアしています。それでいて非常にコンパクトなAPS-C機に仕上がっており、安心して長時間の撮影ができる魅力的なモデルとなっています。
FUJIFILM「X-S20」+サムヤン「AF 75mm F1.8 X」の組み合わせで、いろいろと撮影をしてみましたが、シンプルな操作性、オートフォーカス性能やその写りに関してとても満足できるレベルで撮影をする事ができました。
「AF 75mm F1.8 X」でお散歩スナップ撮影
焦点距離75mm(フルサイズ換算112.5mm)の単焦点レンズというと、被写体としては真っ先にポートレート撮影が思い浮かびますが、最初は筆者の家の近所をお散歩しながら被写体を探して撮影をしてみました。「AF 75mm F1.8 X」と「X-S20」の組み合わせは750gを切る軽量な組み合わせで、気軽なお散歩に持ち出すにはピッタリの組み合わせです。
「AF 75mm F1.8 X」の最短撮影距離は0.69m、最大撮影倍率は0.13倍。このクラスのレンズでは一般的な数値です。大きな不満は感じることは無いと思います。中望遠で絞り開放F1.8による大きなボケが期待できるレンズなので、狙った被写体を印象的に写し撮ることができます。
なんとなく気になったものやトンボ、お花などを撮影してみましたが、特に花などの撮影には焦点距離的にも良くマッチし、構図もスムーズに決めやすいと感じました。絞りを絞れば周辺の解像感も上がり全体的にシャープに写す事もできます。
個人的には、絞りを開けて撮れば全体的に少し柔らかい描写ができるのがこのレンズの魅力だと感じます。
「AF 75mm F1.8 X」で蝶々と小動物を撮影
次に「AF 75mm F1.8 X」で蝶々がいる生物園に行って撮影をしてみました。生物園の屋内で飛び回っている蝶々を撮影するのはなかなかハードルが高かったのですが、焦点距離75mm(35mm換算112.5mm)のおかげでまずまずの距離感で撮影する事ができました。背景の大きなボケを演出したくて絞りを開放で撮影しましたが、蝶々を撮影する場合、角度によってはもっと絞って撮影した方がよかったですね。
少し暗い屋内での屋内シーンなどでもISO感度をそれほど高く上げなくても、絞り開放F値F1.8の明るいレンズのメリットが十分に発揮でき、動きのある被写体に対応できるシャッター速度で撮影をする事ができます。
「AF 75mm F1.8 X」でお祭り撮影
次に撮影をしてみたのが千葉県成田市の成田祇園祭です。人の賑わうお祭りの撮影は、通常だと高倍率のズームレンズで撮影をする方が楽なのですが、いろいろな山車を撮ってみたくて歩き回ることが予想できたので、小型軽量の「X-S20」と「AF 75mm F1.8 X」の組み合わせをメインに撮影をしてみました。
祭りの部分を切りとって撮影するのには、焦点距離的には良かったと思います。もちろんお祭り全体の雰囲気などを撮影するには広角系のレンズは必要になってきますが、このカメラとレンズの組み合わせであれば、もう一台カメラを持って撮影してもまったく苦にならない重さです。
お祭りのシーンでは被写体の奥行き感や立体感を表現するために絞りを開放で撮影しています。絞り開放で撮影しても、ピントが合った部分は非常にシャープでキレのある写りをしています。一方で背景のボケに関しては、シーンによっては2線ボケの症状が出て少しうるさい感じが出る場合ありました。
まとめ
今回、初めてサムヤン「AF 75mm F1.8 X」を使用してみましたが、特に不満を感じる点も少なく非常に満足度が高いレンズでした。レンズ筺体のデザインもシンプルで質感も良く、何よりも小型軽量であるレンズはフジのXシリーズのボディに非常にマッチするレンズです。純正レンズには無い焦点距離のサムヤン「AF 75mm F1.8 X」はコストパフォーマンスの高いレンズで、人物やペット撮影をよくするユーザーは、レンズ選びの選択肢の一つとして考えてもいいのではないでしょうか。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師