スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.19|両国
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はじめに
両国と言えば国技館、江戸東京博物館を思い浮かべるが、ちょっとした用事があり駅周辺を歩いてみたところ思いのほか沢山の楽しい場面に出くわしたので、その後何度か通ってスナップを撮ってみた。
どちらかというと東京の西側に出かける用事が多かったこともあり、東側の下町を撮る機会が少なかったので新鮮な気持ちで撮ることができた。特に駅横のガードの壁面の絵が特徴的でいろんな組み合わせが楽しめると思う。そんな両国での撮り方を紹介したいと思う。
駅横の壁面
目の前に真っ直ぐな壁が続くこの場所は、なるべく煽りなくきれいに正面から撮りたいタイプ。この写真は20mmのレンズなので、壁まで7~8mの距離だとカメラを高くしないと煽り気味になってしまう。ソフトで修正も可能だが画角が狭くなってしまうので、なるべく撮るときに位置、高さを限界まで動かす様に気を遣いつつ、風船の流れ(左下から右上)、人の位置、形を気にしてシャッターを切っている。
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■撮影環境:1/500秒 f/4 ISO125
キャラクターの幟
赤いマフラーが特徴的な映画のキャラクターの幟がコンビニの前で風になびいていた。普段だと幟の黒い部分に透かして人を入れて撮ることが多いのだが、マフラー&なびくイメージが頭に浮かんだので、SSを1/5まで遅くして特に赤いマフラー部分がパタパタとなびくようにして、端に歩く人を入れてみた。
簡単には撮れない写真だが、その場その場でこのSSで撮るとこうなるんじゃないかって挑戦すると、あまり見慣れない面白い写真が撮れる確率がぐっと上がる。
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■撮影環境:1/5秒 f/22 ISO200
ブロックのヘルメット
あり得ない場面に出会える確率がぐっと上がるのが下町スナップ写真の醍醐味。突然現れた理解できない被写体に戸惑うも、左側のメニューのごちゃごちゃ具合と自作ブロックヘルメットの組み合わせでなんとかなったかな。
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■撮影環境:1/125秒 f/8 ISO100
隅田川沿い
川沿いで男女がダンスの練習中、相撲取りの柄の柵越しに撮ってみた。ダンス中なので相撲と関連できそうな体勢になるまでタイミングを合わせて。二人同時に四股を踏んでいる感じに撮れた一枚。
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■撮影環境:1/200秒 f/8 ISO100
改札近く
改札近くで待ち合わせをする事が多いのだが、駅にやってくる人と出てくる人との組み合わせでいろんなパターンで撮ることができる被写体の宝庫。電車のおもちゃがガラスケースに入っていたので内側のガラスの面の反射を使ってみた。綺麗な反射でなくても多重露光感が少しでも出てくれるといいなと思いながらレンズを近づけ、モニタを見ながら露出を調整している。
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■撮影環境:1/80秒 f/4 ISO200
自転車の網越し
正面は白い壁、手前に網系の物。このような場面では思った位置(壁)にフォーカスが行かないのはわかっているので、最初に壁面に焦点を合わせた後にシャッターを切る様にしている。シャッターを切る前のフォーカス前後動作がないので、思った瞬間にシャッターを切ることができる。使っているカメラにもよるが、私の写真はシャッターを切っている瞬間にフォーカスを決めている事が多い。完全なピントよりも瞬間優先。あと網の模様が出てくる絞りで撮っている。
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■撮影環境:1/400秒 f/7.1 ISO400
少し高い位置から
壁を入れた写真は真横だけのイメージだが、バリエーションを増やしたいときは俯瞰できる場所がないか探す。高さで写真はまったく違う物になるので、同じような写真が多くなるなと感じたときは上から狙える場所を探してみよう。
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■撮影環境:1/2000秒 f/3.5 ISO400
自転車と
今回の両国で一番のお気に入り。まず、カメラを少し低めにして正面に向け、影と光が当たる面積を丁度上下半分にする。その中に手前の自転車のシルエットを大きく入れつつ、奥を歩く人、止まっている自転車。三角コーンを三角の隙間に入れてみた。
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■撮影環境:1/800秒 f/7.1 ISO100
風船の壁と親子
風船の赤、黄色、青っていうのは既に記憶の中にあったので、この親子が遠くから歩いてくるときに「あ、三色同じだ」って思って、この場所に先回り。横から撮ると重なって色が少なくなる可能性が高いので、広角で手前の数字も合わせた構図にしてみた。
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■撮影環境:1/125秒 f/5 ISO100
風船の壁の反射
風船の壁の向かい側(撮影する私の真後ろ)のビルの玄関が反射する大理石作りだったので、その反射を利用して撮影。特に黒い大理石はきれいな反射が狙えるので、いい壁を見つけたときは向かい側の建物に反射が狙える場所がないか探してみよう。
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■撮影環境:1/250秒 f/7.1 ISO100
あとがき
今回は壁画を横切る人をメインで紹介したが、いかがだっただろうか。壁メインなスナップは単調になりやすいが、それだけに考えて創意工夫の余地がある。影や手前にあるもの、風なんかも利用してスローシャッターで撮ったりと、普通でない写真になる事を心がけながら撮ってみる癖をつけてみよう。
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■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。