タムロン 70-180mm F/2.8 Di III VXD レビュー|望遠に機動力という革新を。
はじめに
今回はタムロンのズームレンズ「70-180mm F/2.8 Di III VXD」の製品レビューを行っていきます。前回レビューさせていただいた20mm F/2.8 Di III OSD M1:2をはじめとする単焦点レンズのラインナップと同様に、ShaShaのレビュー記事でも掲載している28-200mm F/2.8-5.6 Di III RXDや70-300mm F/4.5-6.3 Di III RXDといったバリエーション豊富なズームレンズたちと併せて検討したい本レンズ。
なんと言っても70mm~180mmという中望遠から望遠の幅広い焦点距離をカバーしつつ、35mm判フルサイズ対応のF2.8通し大口径望遠ズームレンズにおいて世界最小・最軽量を実現※しており、
望遠に機動力という革新を。
■タムロン 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056) 製品情報 | Eマウント | 望遠ズーム レンズ – TAMRON より引用
上記公式サイトのキャッチフレーズ通り、重く・大きく、普段の持ち運びとしては敬遠されがちな望遠レンズに「革新」が起きています。この「機動力」に恩恵を受けながら、スナップやポートレート撮影など様々な場所へ持ち出し撮影してきましたので、ぜひご覧ください。
※2020年3月 タムロン調べ
製品の基本スペックと外観
最初にレンズの概要についてです。基本スペックからおさらいしていきます。
基本スペック
■明るさ:F/2.8
■画角(対角画角):34°21′-13°42′
<35mmフルサイズミラーレス一眼カメラ使用時>
■レンズ構成:14群19枚
■最短撮影距離:AF時 0.85m (ズーム全域)
(MF時 0.27m (WIDE)/0.85m (TELE))*
■最大撮影倍率:AF時 1:4.6
(MF時 1:2 (WIDE) / 1:4.6 (TELE))*
■フィルター径:Φ67mm
■最大径:Φ81mm
■長さ*:149mm
■質量:810g
■絞り羽根:9枚 (円形絞り)***
■最小絞り:F/22
■標準付属品:花型フード、レンズキャップ
■対応マウント:ソニーEマウント用
*カメラ側でマニュアルフォーカス(MF)に設定した場合のみ70mm側で0.27mの「近接領域」での撮影が可能になります。ただし、周辺部分では画質が低下する為ピントが合いづらくなります。
詳しくはサポートページをご覧ください。
** 長さ=レンズ先端からマウント面まで。
*** 絞り開放から2段絞り込んだ状態まで、ほぼ円形の絞り形状を保ちます。
■引用:タムロン 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056) 製品情報 | Eマウント | 望遠ズーム レンズ – TAMRON
外観
次に製品の外観をチェックしていきます。
自重での落下を防止するためのズームロックスイッチ以外は、スイッチ類がないデザインを採用。タムロンのレンズはピントリングのトルクが重すぎず軽すぎない、なめらかな作りになっているのが好印象です。
500mlのペットボトルと大きさを比較してみました。フードありの状態で同じくらいのサイズ感。大型カメラバッグでなくても、そっとカバンに忍ばせることも可能です。
フィルター径にはΦ67mmを採用。20mm F/2.8 Di III OSD M1:2のレビュー時にもお伝えしたとおり、タムロンはフィルター径を統一しているレンズが多いメーカー。ほかレンズとの互換性が高いと、被写体それぞれに合わせたフィルターの数も減らせます。
標準で付属してくる花形フードのHA056は丈が短く、軽量・コンパクトなレンズにぴったりのシンプルな作りになっており、レンズ同様触り心地の良い質感に仕上がっています。
本製品はスペックにも記載している通り、ソニーEマウント専用の商品です。使用・検討ユーザーが多いであろうα7IIIとの組み合わせでも、本体のコンパクトさに負けない取り回しのしやすさが印象的です。
70-180mm F/2.8 Di III VXDの特徴4つ!
ここまでお話した基本スペックや外観をもとに、本レンズの特徴を3つ紹介していきます。
なんといっても軽量コンパクト!
冒頭でも申し上げたとおり、「望遠に機動力という革新を。」と名付けられた本レンズの大きな特徴が小型・軽量という点です。長さ149mm、質量810gという数字はあまりピンとこないかもしれませんが、分かりやすいように焦点距離の近い他社一眼レフ用純正レンズの70-200mm F2.8レンズの例を挙げると、メーカーによって多少異なりますが、大体長さは200mm前後あり、重さは約1.5kg付近です。
この焦点距離帯をカバーするF2.8通しのレンズを、小型・軽量で実現しているのは、本製品がパイオニアと言っても過言ではないと私は思います。
リニアモーターフォーカス機構「VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)」
本レンズにはタムロン初のリニアモーターフォーカス機構「VXD (Voice-coil eXtreme-torque Drive)」を搭載。タムロン史上最速と謳われている事にも頷ける、正確で早いピント合わせは、素早い被写体も逃すことが少なくなることはもちろん、スナップやポートレートの撮影でも恩恵を感じることができました。
最短撮影距離0.85mと0.27mのMF近接撮影
本レンズは望遠ズームレンズであるにも関わらず、ズーム全域で最短撮影距離0.85mを実現。リニアフォーカス機構「VXD」を2組搭載したフローティング機構を採用して諸収差を抑制し、近距離撮影時でも高い画質を維持しています。
また、ボディ側の設定でMF選択時の撮影では、広角端70mmで0.27mの近接撮影が可能に。0.27mでの撮影はスペック注釈の通り周辺部の画質低下が発生するものの、レンズ1本で様々な撮影方法が試せることは大きなメリットです。
特殊レンズやBBAR-G2の採用
本レンズはレンズ群にもこだわりを持っています。特殊硝材であるXLD(eXtra Low Dispersion)レンズをはじめ、LD(Low Dispersion:異常低分散)レンズやGM(ガラスモールド非球面)レンズ、複合非球面レンズなどの贅沢な採用で、高い解像度と色収差をはじめとした諸収差を抑制しています。
また、タムロン独自のBBAR-G2 (Broad-Band Anti-Reflection Generation 2)のコーティングを施し、Generation 2ということで、前世代よりも逆光の撮影時に発生しやすいゴースト・フレアを低減する設計になっています。
その他にもタムロンレンズには安心機能が盛り沢山です。各所に防滴用のシーリングを配する簡易防滴構造や、水滴・手の脂などが付いても拭き取りやすく、メンテナンスが容易な防汚コートの採用など、安心して撮影に臨むことができるレンズに仕上がっています。
70-180mm F/2.8 Di III VXD作例
最後に、ソニーα7IIIと本レンズの組み合わせで撮影した作例をご覧ください。
望遠レンズで遠くの被写体を撮影すると、目では捉えられない細かい描写を感じられて面白いですよね。街灯を下から見上げて撮影しましたが、ライト部分の造りとAFの速さに「へぇ〜!」となりました。
複数の被写体がいても、狙ったところに素早くピントが合います。看板や建造物のシャープな写りを見ると、今回撮影できなかった電車や飛行機、車やバイクの撮影などの乗り物撮影とも相性が良さそうです。
造花の撮影をしてみました。前述した最短撮影距離0.85mの恩恵を感じることができ、近接撮影においてもシャープに写る印象を受けました。ただしスペックの注釈通り、MFでの近接撮影時の周辺部分の画質低下にはご注意ください。
愛猫が運動後に休んでいる様子を撮影。疲れた表情へのスポットAFを狙いましたがそれだけでなく、顔周りの毛並みもシャープな写りでモフモフ感もよく伝わるかと思います。
ポートレートの望遠撮影です。他作例でもお伝えしている通り、洋服や指先・毛先もシャープに撮影でき、F2.8のぼかしや明るさといった恩恵も受けられるということでポートレートにもおすすめです。
広角では中望遠域で被写体全身を入れながら柔軟に周りの風景を入れることも可能です。
最後に
「望遠に機動力という革新を。」という本製品のテーマに沿ってレビューをご覧頂きましたが、この大きなテーマ通り、コンパクト・軽量な筐体にタムロンの技術が集約されている1本でした。
同焦点距離帯の大きさや重さ・価格で敬遠されていた方がもしいらっしゃれば、ぜひ本製品を一度手に取って、触ってみてください。驚きと感動に出会えるはずです!