カメラのキタムラ
Vol.45 2003 SUMMER
特集 写真家 増田勝正氏  
難しいテクニックを追求するよりも、まずはたくさん撮ること。
うまく撮れていなかったら、またチャレンジする。
【アメリカン・カール(原産国:アメリカ)】
子猫は屋外では物陰に隠れようとしますので、カゴ等に入れてやると落ち着きます。
■カメラ:ニコンF5 レンズ:ニッコール105mmマクロ 絞り:f5.6 AE(1/500秒相当)フィルム:フジクロームプロビア100F レフ板・三脚使用 撮影地:東京都江戸川区
【バーニーズ・マウンテン・ドッグ(原産国:スイス)】撮影のために乳牛用の飼料の干し草を乗用車で運んだり、気温が高く、陽のあたる場所を嫌がったりと、なかなか苦労した撮影でした。
■カメラ:ニコンF5 レンズ:ニッコール105mm マクロ 絞り:f4 AE(1/250秒相当) フィルム:フジクロームプロビア100F レフ板2枚・三脚使用 撮影地:千葉県香取郡
納得や満足のない世界。
それが動物写真の難しく、
そして面白いところ。


―――先生にとって、動物写真の魅力とはどのようなことでしょうか?

 そうですね、ひとことでは言うことはできないですね。動物がかわいいとか好きだということはもちろんありますが、写真として見てみると、これでいいという完成形がないことだと思います。シャッターチャンスはすごくいいのに、ピントが甘かったり、僅かにブレていたりすることがあると、何であの時、もう少し注意しておかなかったのかと自分で自分を責めることしきりです。
 やはり、動物が相手なのでこちらの意図どおりにはいかないのが普通です。だから、失敗を繰り返しては、次はこうしてみようとか、工夫をしていくのです。それでも、自分が納得できる写真が撮れる確率は非常に低いのです。それゆえに、「これで満足」、「これでいい」、「これで極めた」、なんて思うことができない世界です。そこが難しくもあり、面白いところだと思います。

【シャム猫(原産国:タイ)】春の花の時期には、前もって近くの公園等の芝生や花の状況等を下見し、撮影場所を決めてから、飼い主のお宅へ伺うようにしています。
■カメラ:ニコンF5 レンズ:ニッコール105mmマクロ 絞り:f4.5 AE(1/250秒相当) フィルム:フジクロームプロビア100F 三脚使用 撮影地:茨城県北相馬郡
―――犬・猫に加え、鳥・小動物を撮ることも多いとお聞きしていますが、その他の動物の写真を撮ることもあるのですか?
 少し変わったところでは、カメやヘビを撮ることもあります。私の場合は、自分の作品ではなく、「このような写真が欲しい」という、依頼を受けての撮影が主なので、様々な要望に応じられるように普段から爬虫類などを飼っている人や、専門のペットショップとのネットワークを築いておきます。
 そういえば、ヘビも撮影のために飼うことを考えたのですが、他のペットと違って、えさの確保が大変であきらめました(笑)。
 でも、やはり私は犬と猫の撮影が基本ですね。海外に行っても犬と猫の情報しか集めません。珍しい種類の犬や猫の情報があると、できる限りは自分の目で確かめるようにしています。
高価なカメラで構えて撮るよりも、むしろ手軽なカメラで撮りたい時に撮ることが上達への近道です。

【日本猫(我が家で生まれました)】我が家で生まれた猫達です。子猫もこれくらいに成長すると、オッパイの時間も少なくなり、離乳食へと移行します。動物と共に暮らしていると、彼らの様々な生活の場面が撮影できます。
■カメラ:ニコンF4 レンズ:ニッコール105mm マクロ 絞り:f16 シャッタースピード:1/125秒 フィルム:フジクロームベルビア スタジオストロボ2灯ライティング 撮影地:千葉県香取郡
―――「ペット・動物ふれあい写真コンテスト」の審査委員をされている増田先生から、いい写真、面白い写真を撮るためのアドバイスがありましたら、お願いします。
 審査をさせていただいて、いつも思うことですが、できるならば、もう2〜3枚多くシャッターを切ってもらいたい。
 いいシャッターチャンスというのはそんなにはないんです。いいなと自分が思ったら、1枚だけでなく何枚か撮っておくことをおすすめします。さらに、アングルを少し変えて撮ることも上達のコツのひとつです。
 そして、撮ったフィルムはなるべく早く現像に出すことも大事です。フィルムの撮影枚数が残っているからといって、いつまでもカメラの中に入れておくと、フィルムが劣化することもあり、せっかく撮った写真のクオリティが落ちることにつながります。また、早く仕上がりを見ることで、次の撮影の参考にもなるのです。
 ペットでも野生動物でも、シャッターチャンスはほんの一瞬。そんな時に準備に手間取っていては、大事なシャッターチャンスを逃してしまいます。また、ペットや動物が物音に反応してしまうことも考えられます。
 私が皆さんにおすすめしたいのは、あまり高価なカメラよりも、むしろ気軽に撮れるコンパクトなカメラです。何度も言うように、シャッターチャンスは多くはありません。構えて撮るのではなく、いいと思ったらすぐに撮る。とにかく何度でも撮ること。特にペットの場合は、この繰り返しにより、被写体であるペットの方も撮影になれてきます。写真を撮ることを特別なことと感じさせず、日常の中に溶け込ませることで、ペットのいい表情や面白いポーズも撮ることができるようになります。
 特別に難しいことではないので、皆さんもどんどんチャレンジしてもらいたいと思います。

【エキゾチック・ショート・ヘア(原産国:アメリカ)】子猫の撮影には、箱・袋・ボール・ヒモなどを小道具に使うと、思わぬシーンが撮れることがあります。
■カメラ:ニコンF5 レンズ:ニッコール105mm マクロ 絞り:f16 シャッタースピード:1/125秒 フィルム:フジクロームプロビア100F スタジオストロボ3灯ライティング 撮影地:神奈川県横浜市
【チワワ(原産国:メキシコ)とミニチュア・ダックスフンド(原産国:ドイツ)】イタズラ盛りの2〜3ヶ月の子犬達は、小枝はもちろん、何でもオモチャにして遊びます。
■カメラ:ニコンF5 レンズ:ニッコール300mm 絞り:f2.8 AE(1/1000秒相当) フィルム:フジクロームプロビア100F 三脚使用 撮影地:千葉県山武郡
―――お忙しいところを、ありがとうございました。

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