カメラのキタムラ
Vol.50 2004 AUTUMN
 
どの土地にもそこを愛する住民がいて、美しい風景が生まれる。
【秋のカナディアンロッキー】すっきりと青く抜けたカナダの空。遠景もキリリと立ち上がって、湿度が全く感じられない。そんな光景を、PLフィルタ−を使い、フィルムで美しく捉えてやる。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:SMCペンタックス645 80-160mm F4.5 絞り:f22 AE フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:カナダ・バンフ国立公園
―――先生は日本以外にも、特にヨーロッパなどの作品を多く残していらっしゃいますが、風景としての質的な違いなどはお感じになりますか?
 ヨーロッパで撮影を続けていて、見えてくるのは自然に対する人々の関わり方の違いです。
 私は自然風景を追いかけて、スイスやオランダなどに何回も出かけていますが、国ごとに自然に対する意識の違いがあることを感じます。
 例えばスイスですと、起伏の激しい自然の地形の美しさを活かして、観光に役立てようと長年努力した成果として、あの美しい風景があるんですね。
 逆にオランダなどは、「オランダの土地は自分たちが作った」と言われるように、本当の自然風景というものはあまり無いんです。あそこは人間が干拓によって作り出した土地ですから。
 どの国も、そこに住む人々がそれぞれの地域を愛し、努力を積み重ねたことによってその地域独自の風土が生まれてきたんです。
 どの土地もその住民がその風土を愛することができないと、人が見て「優しい」とか「美しい」風景にならないのではないかと思うんです。
   
【落ち葉】歩道の上に、プラタナスの落ち葉があった。雨が降っていて、歩道の敷石が美しく輝いていた。広角レンズを使ってパ−スペクティブを出し、小絞りでパンフォ−カス描写を試みた。
■カメラ:ミノルタα-9 レンズ:17-35mm F3.5G Sモード シャッタースピード:1/60秒 AE フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:チェコ・カルロビバリ
【漁船】フィヨルドの入江で、静かに休む小型の漁船。フィヨルドは、天然の良港としての価値がある。海面に影を落とす、漁船と岩山が印象的だった。
■カメラ:ペンタックス645N レンズ:SMCペンタックス645 300mm F4 絞り:f22 AE フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:ノルウェー・ロフォーテン諸島
―――日本の自然風景を海外のものと比較された場合、どのような印象をお持ちになっているのでしょうか?
 やはり日本列島が一番魅力的ですね。これに勝るところはありません。
 それは日本列島が自然風景を撮るのに適切な規模であるということ。それから複雑繊細な地形・植生があり、季節を通しての変化が顕著だということですね。
 どういうことかというと、日本には人が関与していないまるっきりの大自然というものはほとんどありませんが、そういう自然ではなく、「人間が古い時代から関わりを持ち、生を営みながら生み出してきた自然」こそが、まさに日本列島の自然風景だからです。
 つまり人が関与することによって、「人に優しい自然」として見えるようになったものなんです。
 そういう風土から生まれた自然風景を持つのが、日本列島なんですね
デジタルカメラで撮影
【秋の渓流】デジタル表現の魅力は、画面のコントラストをコントロールできること。デジタルだからといって、色を大幅に変えたり、何かを挿入したりしたのでは、写真=記録という大切な部分がふきとんでしまう。
■カメラ:キヤノンEOS-1DS レンズ:EF28-70mm F2.8L シャッタースピード:1/10秒 AE -2/3補正 PLフィルター・三脚使用 撮影地:青森県奥入瀬渓流

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