「ココを撮って」、「私のきれいなところはココ」。
さらに「ココを撮りなさい」と、風景からメッセージが出ています。
――先生は、セミナーや撮影会の講師を数多く努められています。
特に被写体を前にした撮影会では、どのようなアドバイスをされているのですか?
 

【夕焼け空】秋は日照時間が短い。その分、朝が遅く、夜が早くなる。朝日や夕陽が撮りやすくなるということなので、積極的に、空の風景を撮ってやりたい。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF70-200mm F2.8L シャッタースピード:1/60 AEフィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:長野県岡谷市高ボッチ高原

 まず、生徒さんが、自分の狙いたいところに三脚を立ててカメラをセットしています。私はそのファインダーを覗いて、ほんの少しフレーミングを変えてあげるだけです。それだけで全く違った写真になります。それは、目の前の風景のどこに”美“があるのか、その”美“が的確に充分表現されているか、というところをチェックしているのです。

――変えるのはフレーミングだけですか? 

 フレーミングだけです。アングル・焦点などは一切いじりません。それにより、最初に生徒さんご自身が決めた見方との差がはっきりします。風景写真は美しい風景をただ切りとるではなく、やはり自分の思いを込めて、自分が引き出したいものを、連れ出してくることが重要です。風景写真は現実にある本質的な美を引き出すんです。切りとるだけでは、いい風景写真にはなりません。撮影する風景に対した時に、風景が「ココを撮ってくれ」と、言っています。「私のきれいなところはココです」。「ココを撮りなさい」と、風景の方からメッセージが出ています。だから、そこを撮るだけでいいんです。

日本人は本質的に風景に対して、自分の気持ちを注ぎ込むことが得意。そして、日本列島は最高の自然写真スタジオです。

――先生には毎年キタムラの「四季のフォトコンテスト・秋」の審査員をお願いしております。また、来年の5月15日応募締切の『四国・今治地方観光写真コンテスト』の審査員も努められますが、応募作品の傾向の変化など、気になった点はございますか?

【大雪山の秋】紅葉の頃に雪が降るという、面白い自然現象に出合うことも多々ある。そのような時には、落ちついて冷静にフレ−ミングすることが肝要である。
■カメラ:キヤノンEOS-1N レンズ:EF17-35mm F2.8L シャッタースピード:1/30 AE フィルム:RVP PLフィルター・三脚使用 撮影地:北海道大雪山バショウ沼
 日本人は本質的に風景に対して、自分の気持ちを注ぎ込むことが得意な民族です。このことは写真だけに限りません。音楽・絵画などにも言えることです。
 なぜならば、日本列島の自然景観が程ほどの大きさだからです。人間の感情に置き換えられる大きさなのです。さらに、さまざまな地形が存在しています。それは人間の心で語り合える自然なのです。
 これに比べると、オーストラリアのグレートバリアリーフやサハラ砂漠、さらにはヒマラヤ山脈・ローキー山脈といった自然ですと、あまりにもスケールが大き過ぎて、その自然に対した時に、なかなか心で語り合うことができません。 ですから、日本列島は世界で最高の自然写真スタジオです。他にはありません。
 
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