――先生は以前から、「日本の紅葉は世界に類を見ない美しさ」だとおっしゃっています。
しかし、「秋の被写体は紅葉だけではない」とも言われています。そのことについてお聞かせください。


 古今集にも『秋きぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる』と歌われていたように、昔から人々は秋が近づいてきたことを、見た目で判断するだけではなく、風の音ひとつで感じていたのです。
 そのように、秋を全身で感じて撮ることが大事なことです。秋になると太陽が南側に移ってきます。それにより、光が次第に斜光線になり、ライティングとしては最もいい条件になります。
 そして、自然の風物が夏の盛りから、凋落の秋へ向っていきます。風景が物悲しくなっていきます。その気持ちで風景を眺めてみるだけで、秋の素材はいっぱい見つかるはずです。もちろん紅葉は端的に秋を表現していますので、紅葉を撮ることはいいことだと思いますが、写真を撮ることだけでなく、心の中で秋を考えてみれば、もっといろいろな発見ができるはずです。

【クラシックカー】アンティークの素材として、古い自動車などはピッタリ。なるべく郷愁を誘うように撮ってやる。ニッカカメラがヤシカに吸収された当時の[名機]で。
■カメラ:ヤシカYF レンズ:ニッコール50mm F2 シャッタースピード:1/60 絞り:f8 フィルム:E100VS 手持ち撮
【午後の光】アンティークカメラ持つと、自由になれる。思いのまま、面白いと思う被写体を見つけて自由な気分で撮影する。
■カメラ:コニカIIIA レンズ:ヘキサノン 48mm F2 シャッタースピード:1/50 絞り:f11 フィルム:E100VS 手持ち撮影 撮影地:奈良市

アンティークカメラを、「写す道具」として使ってはいけません。
あくまでも趣味のひとつとして楽しむことが大事です。

――先生は、アンティークカメラのコレクターとしても有名ですが、そのカメラを飾るだけではなく、実際にフィルムを入れて撮影もされるとお聞きしています。アンティークカメラの魅力や、撮影された仕上りなどについてお聞かせください。

【若者たち】名機ライカを模倣した、コピーライカが世界各国で生まれた。日本のカメラが最も多いが、総じて優秀。これは、その中のメルコンで撮った。
■カメラ:メルコン レンズ:トプコール50mm F3.5 シャッタースピード:1/50 絞り:f5.6 フィルム:E100VS 手持ち撮影
 どんな超高級機も、また二流・三流といわれているカメラでも、そのカメラを造った技術者たちの一生懸命さが見えます。アンティークカメラは誠実な人間の努力の結果だと思います。 また、昔のカメラには、それぞれの時代における先端の仕事をしていこうとする努力も感じられます。ですから、ライカやローライフレックスのコピー機でも、少しでも本物に近づこうという気持ちが感じられます。そのようなところにアンティークカメラの素晴らしさを感じます。 同時に、それぞれの時代に、カメラを通してさまざまな記録が生まれ、いろいろな人生が編みこまれている。そのようなことに思いを馳せると、そのカメラがとてもいとおしくなります。

【滲む光】これも、国産コピーライカのレオタックス。レンズが汚れていて、滲んでしまったが、これこそアンティークカメラの味わい。シャープに撮れないから面白いのだ。
■カメラ:レオタックスFV  レンズ:キヤノン28mm F2.8 シャッタースピード:1/50絞り:f11 フィルム:RDP 手持ち撮影
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