種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2015.11.06【Vol.243】
ニコンFは日本光学工業(ニコン)が1959年6月にリリースした当時の日本のカメラ業界を牽引した歴史的な1台です。
本格的なプロ仕様一眼レフとして当時の最新技術と、それまでにニコンが培った技術を織り交ぜて登場したニコンF。高級レンジファインダーカメラ、ニコンSPをはじめ多くのプロの現場でその信頼を勝ち得ていたニコンが本格的なシステム一眼レフカメラとして初めて世に送り出した一台です。
均整のとれた角形のデザイン、まさに一眼レフを象徴するかのような鋭角のファインダー。無駄を一切廃した写真を撮るためだけの道具としての存在感は今見ても新鮮です。前出のニコンSPを母体に開発されたカメラだけあって、機能面では共通する部分も多く、後のニコン製一眼レフカメラと比べると、お世辞にも使いやすいカメラとは言えませんが、細かな改良を随所に加えながら発売から約15年もの長きにわたって生産され続けました。また、シャッター幕には0.25mmのチタン薄膜を採用(初期は布幕)するなど、当時最高の品質の金属や材料を使用し、現在に至るまで使用可能な固体も数多く残っています。
二コン一桁一眼レフの代名詞ともいえる視野率100パーセントの交換式ファインダーもプロ用としての存在感を証明してくれます。アイレベルファインダーのほかに、露出計つきのフォトミックファインダーを4種類、ウエストレベルファインダー、アクションファインダーと計7種類の交換ファインダーが発売されました。その他、連写を可能にしたモータードライブや250コマ撮影用マガジンなど報道現場にも対応するアクセサリーも用意されました。
その生産台数は非常に多く、シリアル番号及び細かなバリエーション違いで製造年代を特定できたりします。特殊なモデルを除けば大変入手しやすいカメラです。日本の一眼レフカメラを牽引してきたまさに記念碑的なカメラともいえるニコンF。現在のニコン一眼レフにも継承される「Fマウント」を採用した最初のカメラでもあります。豊富な交換レンズ群とともに改めてこのニコンFに注目です。