種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2015.01.23【Vol.202】
今回ご紹介のカメラは大成光機(大由光学と成増光機が1950年代に合併した)が1958年に発売したWelmy Wideです。ボディーのほとんどを金属部品で仕上げており、デザイン性に優れた一台です。カメラ正面から見て取れるエプロン部分の独特の形状と本体の多くは当時の日本製カメラ同様に輸出されたようで、日本国内で中古が市場に出ることが少ないカメラです。とはいえ希少価値が高いカメラかというとそのようではなく、単に壊れた、安かったため雑に扱われて失われたものも多いのではと思います。
1950年代にオリンパスワイドをさきがけとして、国産カメラメーカーよりいくつかのワイド専用機カメラが登場しました。その中の一つがこのWelmy Wideでした。
レンズはTaikor35mm F3.5、直径が2センチ強の極薄の強い曲率を持った凸レンズをフロントレンズに採用しています。お世辞にもすこぶる描写がシャープとはいえないのですが、当時は標準レンズを搭載するカメラがほとんどの中、広く撮影できるワイド専用機は重宝されたのかもしれません。機能はいたってシンプルでシャッター速度はスローなしのB及び1/25~1/200の4速です。距離計なしの目測カメラですので、被写界深度を利用したスナップ向けの機種と考えられ、距離表示に∞を黄色12ft(4.7m)の部分を赤に色分けして素早い距離環操作を狙っています。ちなみにシャッター速度はボディー正面とボディー上部の2箇所で確認可能で、カメラの中身を見ないと解らないのですが、その小さな金属製の鎖を使用した連動機能が凝っています。当時はカメラメーカーごとの個性やこだわりが強く残る時代なので、この時代のカメラは本当にみていて飽きないモノが多いです。また、薄暗く見にくいのですが、コントラストをつけて35mm視野の表示を少しでも視認しやすくさせるよう色付きのガラスを採用したファインダーには、設計者の熱心さをうかがうことができます。なお、Welmy Wide はStar Liteという名称でも販売されていたようですが(主に輸出専用と考えられます)、同一名のカメラが大和光機より出ているので混同してしまいそうです。
今回のWelmy Wideはちょっとマイナーな国産カメラでしたが、このほかにもまだまだ個性の強いカメラがどこかに隠れているかもしれません。