「リズムシ」シリーズの開発者、成瀬つばささんに直撃!(前編)
2012.05.08 UP
(お話をうかがった人)
成瀬つばさ さん
国立音楽大学を経て、多摩美術大学大学院ではメディアアートの研究を行う。卒業後の現在は、メディアアーティストとしてのアプリ制作や、イラストレーターとしての活動、ワークショップなど幅広く活躍中。最近ではWeb文芸誌「マトグロッソ」での連載もスタート。「リズムシ」をはじめ、「ラップムシ」、「オトスケッチ」、「オトツムギ」など、10の音楽アプリが大ヒット。
公式サイト
「オトノアソビバ」
「マトグロッソ」(amazon.co.jp「文学・評論」カテゴリー内の「マトグロッソ」へのリンクをクリック)
アプリについて
リズムシ
¥無料
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カテゴリ | ミュージック |
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更新 | 2010.05.28 |
サイズ | 2.3MB |
言語 | 日本語,英語 |
販売業者 | tsubasa naruse ©2009 Tsubasa Naruse |
条件 | iPhone、iPod touch および iPad 互換iOS 3.1.3 以降が必要 |
対象年齢 | 全年齢 |
美大の院生時代に「リズムシ」をリリース
――成瀬さんは、すごくユニークなご経歴の持ち主ですよね。音楽大学卒業後に、美術大学の大学院に入学されたのだとか。「リズムシ」を制作したのは、学生時代ですか?
成瀬つばささん(以下、成):そうですね。音楽大学で勉強をしていたころから、インタラクティブに音で遊べる作品に興味があって、少しずつ制作を始めていたんです。そのころは「Flash」というソフトを使っていて、「リズムシ」のプロトタイプのようなものも作っていました。それはパソコン上でしか動かすことができなかったんですけど、そのころにはもう、iPhoneが発売されていて、これは自分がやりたいことにピッタリな端末だと思っていたんです。
こちらがFlashで作成した「リズムシ」のプロトタイプ。このころからゆるカワ~
――でも、iPhoneのプログラミングを習得するのも骨が折れますよね?
成:当時はまだ自分で端末を持っていませんでしたし、アプリ開発のためには新たに勉強しないといけないことも多いので、なかなか始めるタイミングをつかめずにいたんです。iPhoneアプリの制作を始めたのは、ちょうど美大の大学院に入ってからですね。5月末には「リズムシ」をリリースしました。今から2年ほど前になります。
――「リズムシ」シリーズは今や280万ダウンロードを超える大ヒットアプリになっているわけですが、ずばり、ヒットの要因をどう分析されていますか?
成:最初の「リズムシ」は実験的にリリースした部分もあるんです。App Storeへの申請は慣れるまでややこしい部分も多いので、まずはひとつアプリをリリースしておきたくて。だから、特にプロモーションも何もしていませんでした。にもかかわらず、気がついたらどんどんランキングを上っていって、すぐに1万ダウンロードを超えたんです。最近は若いユーザーや女性ユーザーが増えてきて、フランクな感じのアプリも増えてきましたけど、当時のApp Storeに並んでいるアプリって、個人が制作しているものでも、製品っぽいというか、堅そうなアプリが多かったんですよね。音楽アプリは特に。そんな中で「リズムシ」の手描きアイコンはかなり目立っていました。たくさんの方が「これはいったい何だろう?」と興味本位でダウンロードしてくれたのが大きなきっかけになっていたと思います。
リズムシくんは偶然生まれた!?
――ユーザーさんの反応はいかがですか?
成:当初からの狙いでもあったんですけど、楽しみ方もユーザーの層も、すごくばらけています。0歳の赤ちゃんから、94歳のおばあちゃんまで楽しんでいただけているというお話も届いています。若い世代だと、カップルでアプリを使ってくれている方もいるんですが、使う理由が男女で違う場合もあるみたいです。たとえば男性は音楽ガジェット的な要素を、女性はイラストを気に入ってくれて…という理由だったり。そういう反響をいただくとすごく嬉しいですね。
――この“ゆるカワ”なイラストは、特に女性には堪らないと思いますよ(笑)。「リズムシ」のキャラクターが生まれたきっかけは何だったのですか?
成:昔からこういった手描きタッチで作品制作をしていたわけではないんです。音大時代には、メインの演奏活動以外にも、音をテーマにしたモーショングラフィックや実写の映像作品の制作・研究も行っていました。ただ、音と映像を絡めて何か面白いことをやりたいなと思ったときに、どうしても自分の手で描けないとできないことがたくさんあったんですね。だから、ある時期に集中して絵の勉強をしまして、全部手描きの「セカイノカタチ」というアニメーション作品を作ったんです。これにはリズムシは登場していないんですが、作品は高評価をいただいて、手描きタッチで作品制作をする自信につながりました。ちょうどそのとき、知人にプログラミングを教える家庭教師をしていて、教材用のデモプログラムに何気なく登場させたのがリズムシなんです。今と比べるとちょっと体が細身ですね。
――何気なくですか?
成:そうですね。そのころは自分で描いたキャラを作品にできる自信はなくて…。ちょっとしたデモ作品だったから描けたという感じです。名前も、リズムで遊べるものを作りたかったから、言葉遊び的に「リズムシ」に。ムシなのだから触覚らしいものもつけて今の形になりました。このリズムシを知り合い何人かに見せたら意外と評判が良くて。それでやっと「このキャラクターできちんと作品も作ってみたい」と思えたんです。
イラストはすべて手描き。楽譜を描くためのシャーペンで描いているそう。一定の線の太さ・濃さを保てるので、使いやすいのだとか
ラップを刻んでいるのは後輩!
――シリーズの中でも人気が高い「ラップムシ」は、ラップの声を担当されている方がいらっしゃいますよね。あの独特な発音の仕方が、笑いのツボを抑えていて面白いです。
成:声を担当してくれているのは、音大時代の後輩なんです。帰国子女なのでばっちりカッコいい英語の発音もできるんですが、ワードによってはわざと野暮ったい発音にしてもらったり。日本人の笑いのツボもばっちり分かっているので、楽しいものになりました。
――「セッション」「ミッション」「ハクション」など、ワード自体も笑えるものが多いですが、ワードのチョイスなどはすべて成瀬さんが?
成:同じく音大の後輩に、ヒップホップをやっている子がいたので相談に乗ってもらって、最終的には作品の世界観や操作性を考慮して自分で決めていきました。
ワードのボタンをタップしたときに登場する、様々なリズムシのイラストにも注目!
――声を録音するときは、音響監督的なオーダーもされたのですか?
成:「こんな感じで」と雰囲気を伝えたり、「このリズムに合わせて言ってね」みたいなオーダーはしています。「ラップムシ」の声を担当している後輩もコンピュータ音楽を専攻していて、家にレコーディング機材も揃っているんですよ。だから、頼めば自宅で録音して、アプリでそのまま使えるクオリティのデータを送ってくれるんです。
――なるほど。そういうお友達や後輩も、アプリ制作にいろいろ貢献してくれているのですね。
成:そうですね。音大・美大の知り合い、ミュージシャン仲間、みんなそれぞれ面白いことをやっているので良い刺激になっています。
関連情報
あとがき
プログラミングを独学で習得されたと聞いて、驚き! 後編では、「リズムシ」シリーズの今後の展開や、アーティストとしての成瀬つばささんについて、もっともっと掘り下げていきます。
- ※掲載されている製品・サービスは、2012-05-21 現在の情報になります。
- ※スペック情報、価格は万全な保障を致しかねます。詳細については、各メーカーにお問い合わせください。