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種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー

2014.07.25【Vol.177】

クラシックカメラ話「ベッサマチック」

ベッサマチック

世界初のレンズシャッター式35mm一眼レフであるZeiss Ikonのコンタフレックスに遅れること約6年、世界的なカメラメーカーの老舗フォクトレンダー社から待望の一眼レフカメラベッサマチックが登場しました。総金属製、約1kgの重量をもつその本体は、手に持つとずっしりとした重みがつたわり、そして、フォクトレンダーならではともいえる、経年劣化がほとんど見られないシルバーのボディーは当時の高級感をありのままに残してくれています。

全体的にカーブを描いたボディーデザインは非常に美しく、当時競合であった一眼レフである、コンタフレックスやレチナレフレックスのような角張った男性的なデザインとは一線を画するものです。機能面を見ると、シャッターは当時の最先端レンズシャッターであるSynchro-Compurを採用。絞りとシャッター速度を連動させて一定の露出を常に得られるライトバリュー方式の露出操作部を備えています。ファインダーはスプリットイメージを採用、。そして、大きな特徴である露出計内蔵のファインダー内表示が採用され、露出計の指針を合わせるだけで適切な露出をセットすることができ、ファインダー内で絞り・シャッター速度を確認することもできます(ベッサマチックデラックス及びCSのみ)。

なお、後の同社ウルトラマチックではクイックリターンミラーが採用されますが、当時多くの一眼レフがそうであったように、ベッサマチックもシャッターレリーズ後はファインダーがブラックアウトしてしまいます。また、交換レンズには35mmから350mmまでの10本の単焦点交換レンズと世界初のスチールカメラ用ズームレンズ、ズーマー36-82mmがラインナップされています。ベッサマチックはその後、1962年に露出計を外したエコノミーモデルのベッサマチックを、露出計にCdSを採用した1967年のベッサマチックCSがリリースされますが、結局シリーズは長く続かずに3モデルで1969年ごろに生産が終了してしまいました。

ライカだけでなくドイツ製一眼レフは世界中に衝撃を与えたものだったのですが、しかしながら、日本のメーカーの追い上げには適わず、次第にドイツのカメラ産業が衰退していくことになります。ベッサマチックが登場した1960年代はドイツのカメラ産業が輝いていた最後の時代になるわけですが、その当時のドイツカメラ製品の完成度の高さは、当時の日本を含め諸外国には決してまねできない素晴らしい仕上がりを持つものが多数存在します。ベッサマチックももちろん、当時の最高の仕上げがなされた逸品といっても過言ではありません。


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