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種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー

2014.08.29【Vol.182】

クラシックカメラ話「ローライマジック」

ローライマジック

世界初のAEカメラは1938年に発売されたKodakのSuper Kodak620で、シャッター優先AEカメラでした。カメラを作るのには、露出計配置によるカメラの大型化、部品数が増え、機構の複雑化による高コストや故障率の増加などさまざまな問題があります。カメラに露出計を内蔵し、それに絞りとシャッターを連動させる。そういった自動露出の試みは多くのカメラメーカーがーチャレンジしていて、1950年代後半から徐々に市場に現れるようになりました。

1960年10月に発売されたFranke und Heidecke社のRollei Magic(ローライマジック)もそんなAEカメラの一つです。よく知られているように、ローライのシャッターはデッケル社もしくはガウティエ社から供給を受け、単体露出計はゴッセン社からのものを組み合せて造られています。レンズもシュナイダーやカールツァイスのものを搭載しています。フィルム送り機構などさまざまな特許を持ち合せたボディーに専門メーカーの部品を組み付けるといった方法でカメラを送り出してきたメーカーです。

そんなローライにAE機構を搭載したローライマジックですが、ブローニーフィルム使用二眼レフカメラでプログラムAE機能を搭載したのは1959年のリコーオート66と今回のローライマジックのみです。ローライマジックにはI型とII型がありそれぞれI型は1962年5月まで、それから1968年9月までがII型の発売となっています。発売時の価格がケース付きで472マルク、日本円でおよそ43,000円でした。初任給13,000円の時代ですので、まだまだカメラが高嶺の花だった時代です。ただし同社のフラッグシップモデルのローライフレックス2.8E3の価格840マルクと比べたら4割程度安く、プログラムAE機構が備わっているとはいえ、ローライの中ではエントリークラスのカメラだったようです。

とにかく面倒な露出操作無しにシャッターを押すだけで写真が撮影できるAEカメラは大変便利で、写真人口を増やすのに一役買うことにになります。1960年代はさかんにAEカメラが作られ、カメラが売れた時代でした。ただしローライマジックは少し違っていたようで、約8年の製造期間中、I、II型併せて約38,000台しか生産されていません。また、その後プログラムAEが搭載された二眼レフカメラが同社からは生産されていないところをみると、あまり売れた機種ではなかったのかもしれません。特にII型は12,600台しか生産されておらず、資料には「当時は販売不振だった」とする記述もあります。

ここで、カメラのスペックです。搭載されるレンズはI型II型ともにXenar75mm F3.5です。AEの範囲はI型がEV8.5~EV17 II型がEV8.5~EV18となっています。シャッターは両方ともProntormat-Sシャッターですが、I型は1/300までのModell 565k1、II型は1/500までのModell 602kを搭載しています。フィルム送りはスタートマーク式のセミオートマットとなっており、同時代のローライフレックスT型同様コストダウンが図られています(内部のスペースの都合もあるかもしれません)。


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