種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2014.04.11【Vol.162】
携帯電話、スマートフォン、タブレットなど携帯型の端末にはすべてと言っていいほどカメラが内蔵されています。今では一人一台以上のカメラを所有している人も多いのではないでしょうか。そんなカメラもかつては一家に一台と言われるほど高級だったわけですが、そんなカメラを低価格で扱いやすくすることで、子供をターゲットとして販売したカメラが富士写真フイルム株式会社の「フジペット」です。
「だれでも写せるみんなのカメラ」という宣伝文句で手軽さを謳っています。1957年発売当時の価格は1,950円、専用のフジペットバッグが300円で、本格的なカメラに比べれば低い価格設定ですが、子供用に与えるにはそれでも少し敷居の高い製品だったようです。
ボディー上および裏蓋に軽金属を、本体構造にはプラスチックを使用していています。本体のカラーにはゴールド、レッド、グリーン、ブラックなどいくつかのバリエーションがあったようです。使用フィルムはブローニー判、画面サイズは6x6のスクエアフォーマットで撮影できます。シャッターチャージとレリーズがそれぞれ独立しているので、不用意にシャッターを切ることができない設計です。
シャッター速度は約1/50秒とBの2種類。開放F11焦点距離70mmのメニスカスレンズを搭載し、シングルレンズ特有のピント位置のずれを軽減するためにフィルム室にカーブを施しています。ただし、シングルレンズではあるもののF11~F22の深い絞りによりピントは2mから無限遠までと広範囲に合う設計です。使用説明書は25ページで、カメラの使い方と写真撮影の基本、フラッシュの使い方、引き伸ばしの知識やアルバムの作り方などが親切に書かれています。
もちろん自社製品であるフィルムの販売促進の目的もあったわけですが、その低価格と手軽さで小学生などを中心にフジペットが普及していきます。その後は露出計内蔵のFUJIPET EE、FUJIPET 35とシリーズが展開され、低年齢層への写真の啓蒙に貢献した記念すべきカメラと言えるでしょう。