種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2013.02.22【Vol.104】
このコラムではレンズに関する写り、機能面、掃除方法、種類など、いくつかのトピックを挙げてきました。そしてレンズの話の中で一番多く聞かれる質問が「ズームレンズよりやっぱり単焦点レンズのほうがいいのか?」ということです。どういう点で良い悪いを判断するのか。よく聞かれるのが「ズームばかり使用していると写真が上手にならないから単焦点を使うといい」という話です。ズームレンズを使うから下手になることはなく、かといって単焦点を使えば必ず上手になるわけではないことはご承知の通りです。
ファインダーの中で広い範囲と狭い範囲を手軽に変更できるズームレンズは単焦点レンズに比べれば圧倒的に便利です。当然高倍率ズームともなれば28mm程度の超広角~300mm程度の超望遠撮影まで1本で事足ります。問題なのは撮影位置を変更せずにその場だけで広角から望遠までズームを繰り出して撮影することです。ここが「上手くならない」と表現される大きな部分だと考えられます。
単焦点レンズは撮影者が前後することで画面の広さを遠近感などを調節するわけですが、ズームだとつい横着して指先だけで広さを調節してしまいます。結局ズームレンズだとそのレンズが持つ特性(広角レンズの遠近感、望遠レンズの圧縮感など)をあまり考えずに撮影し、果たしてその被写体に対して適切なレンズ選択であったのかという意識が少し弱くなってしまうのかもしれません。ただし、言い換えればたとえズームレンズでも何ミリで撮影したかを考えて撮影する、そしてそのレンズの特性を生かしながら少しずつ撮影が出来れば、ズームでも単焦点でもあまり大きな違いは出てきません。その点で焦点距離がはっきりしている単焦点レンズは被写体に対するレンズワークを勉強する上ではシンプルで大変有効、上手になるための道具として考えられるのでしょう。
目で見えた景色をファインダーに移しかえたときのズレというものが写真撮影における難しいポイントです。自分の目がレンズと同じように…と言葉では簡単ですがなかなか上手くいきません。ただ、常に使うレンズを決め、よく使う焦点距離を知っておくことで、ある一定の範囲を目にしたとき「大体何ミリぐらいか」という漠然とした距離感や範囲がわかるようなってきます。たくさんのモチーフの違う被写体をたくさん撮影することも面白いですが、自分が一番好きな「焦点距離」を知ることでズームと単焦点そのどちらも使いこなせるようになるでしょう。