種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2014.09.05【Vol.183】
かつては山岳写真や風景写真において、特に遠景の写真を撮影する際に用いられた赤外線写真。フィルムも数社から発売されていて、知識さえあればだれでも手軽に赤外線撮影が楽しめました(保管や取り扱いが面倒ではありますが)。また、お正月の富士山を撮影した新聞やグラフ誌などでも盛んに使用されていたようです。現在でも少数ながら赤外線フィルムは発売されています。赤外線フィルムは、可視光線の赤色域の外側、肉眼では識別できない光の波長である赤外線に感色する性質を持ちます。ただし、可視光線にも感じるので、それらをの光の波長を吸収させるために赤色のフィルターを併用して撮影するのが基本です。
さて、デジタルカメラでも赤外線撮影はできるのでしょうか。デジタルカメラのローパスフィルターは可視光線以外の光をほとんど吸収します。ただし赤外線の影響をまったく受けないというわけではないので、赤外線フィルムに比べると、その効果はやや薄れてしまいますが、IRフィルター(赤外線撮影用フィルター)を取り付ければ撮影は可能です。フィルターはねじ込み式のものもありますし、ゼラチンフィルターと呼ばれる薄膜のシートタイプのものもあります。本格的な赤外線撮影を行うために、カメラのローパスフィルターを外す改造を行っている写真愛好家もいるようです。(カメラの改造はメーカー保障外になりますので自己責任で行ってください)。
撮影するのであれば、なるべく快晴、遠方が見通せる構図で、雲があり手前に樹や建物などがあり遠近感がある景色がいいでしょう。また、IRフィルターは赤色とはいえほとんど黒に近く、肉眼では素通しで反対側を見ることができません(可視光線を吸収するため)。よってレンズにフィルターを装着した状態ではカメラのファインダーで被写体を確認できませんので、フィルターを外した状態で確認。ピントはマニュアルで絞りをなるべく絞って撮影してください。
そして露光時間が長くかかるので三脚は必須です。赤外線撮影は露出が難しいのですが、デジタルですので撮影した画像を確認してトライ&エラーで露出を調整すればよいでしょう。また、基本はモノクロでしか赤外線写真は楽しめないものでしたが、デジタルではカラー変換して、非現実的な色再現で写真を楽しむことも可能です。