修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2015.09.04【Vol.1265】
SummritはF値を明るくした設計上、ヘリコイドから鏡筒を止めている固定環をおいそれと外す事が出来ない。情報を持ち合わせていませんでしたので糸口を探すのに熟考した経緯があります。
鏡筒を分離し、各々の後レンズを鏡筒から分離した所です。
ライカレンズの仕様として金属にレンズを取り付けた投げ込みになっており、鏡筒から分離するに垂直に引き上げなければなりません。傾けて鏡筒と金属同士が噛みますと大変です。
後レンズが収まっていた鏡筒にも酸化による錆が浮いていました。
後レンズを取り付けてある金属の外径、鏡筒の内径はインカの石組と同じで剃刀の刃一枚の隙間もないのです。両者が錆による外径・内径の寸法変化は、時として致命的な問題を起こします。
僅かに浮き出ました錆を薬品処理します。錆でいぶし銀状態に輝きが戻りました。
製造から日時が経ち金属の側面に錆が浮かんでいます。
錆の痕跡が残っていますが、薬品処理により輝きを取り戻し、鏡面仕上げ並みとなりました。
京都開化堂の茶筒の如く垂直に落とし込みますと自身の重さでゆっくりと沈み込んでいくのです。隠居人も一枚の銅板から職人の技が作りだしました筒が長い息を吐き、沈み込む姿に感動し保有してしまいました。
修理仲間も申しますが、外せない場合はドライヤーで若干の加熱をする。とお互いの金属の膨張比率の違いにより、余裕が生じ、後レンズを外す事が出来ます。
それでも外せない時は諦める。この様な場合は「修理人危うきに近寄らず」の様です。