修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2016.07.01【Vol.1354】
指で突いてしまったのか?手入れの失敗か?チタン製シャター幕が破損してしまいます。
何とか成らないか?と言われ風呂敷に包んで持ち帰ったのです。
シャター機構部を分離していきます。
シャター幕を破損しながらも作動はしています。待てよ!動作音が異常な大きさなのです。
原因はミラー駆動部コイルバネを組み立て次に変形させてしまったのです。
情報・知識を持ち合わせないと、組み立て時、必ずミラー駆動部コイルバネを変形させたり、断裂させてしまうのですね。
チタン製幕はカシメ仕様のネジで止めてありますので代替えを用意いたしました。
シャター幕作動軸にはMコイルバネが取り付けられており、作動速度を司る重要なMコイルバネなのです。変形させたら大変ですしMコイルバネに予備力量を掛けておかなければならないのです。
係止レバーにブレーキ外環の突起が止められていますね。
チタン製幕の位置も開いた状態ですのでガバナ作動カムを組み付けても光が漏れてしまいます。
専用治具にシャター機構部を取り付け、歯車を回転させてシャター幕作動軸のMコイルバネを取り付けてある赤丸点線矢印①を延長線上の傘歯歯車に合わせるとチタン製幕は閉まり、シャター幕作動軸の向きがガバナ作動カムを組み込む位置になります。
それと同時にブレーキ外環の突起が緑①から緑②へ移動してきます。
この時点ではMコイルバネの力量はゼロです。
中間歯車を左親指の腹で強く押さえてから専用治具にて巻き上げます。
するとシャター作動軸は動かず、ブレーキ外環が緑②から係止レバーを超えて緑③まで移動します。移動したことでMコイルバネに予備力量が掛かったことを意味します。
試しに左親指を離してみてください。シャター幕作動軸が回転して幕が回転します。
でも十分な力量ではありませんから、不十分な回転になります。
要はMコイルバネに予備力量に加えて本力量を加えてないからです。
本文に戻ります。ブレーキ外環が緑②から係止レバーを超えて緑③まで移動した所でシャター作動軸にガバナ作動カムを組み込みますと係止レバーで止められます。
この時点で左親指を離すことが出来ますと同時にMコイルバネに予備力量が掛かったことになります。当然親指を離してもシャター幕は回転しません。 専用治具にて巻き上げますと予備力量に本力量が加わりシャター制御部が動作します。 コイルバネの働きを説明したいと思います。 単純にコイルバネ力量を掛け、外した場合は力量がゼロになるまで戻ろうとします。 これでは急激に回転力が落ちてしまいますね。結果速度が出ませんから予備力量が必要になるのです。同じようにミラー駆動部のコイルバネにも言えます。
カメラ修理講座でも説明をするのですが、理解されるのは難しいようです。
では、山登りに置き換えてみましょう!
麓から山頂を経て麓にもだったのでは、予備力量が無く、麓から山頂までが力量を掛けたことになり、その後、山頂から麓まで急激に力量が減衰してしまいます。
山の中間点に横に線を引いてみましょう。
麓から中間点までが予備力量になります。中間点から山頂までが本力量と致します。
山頂から中間線までがシャター幕が回転する力量とすると中間点から麓までの力量は保持されている事になります。ですのでシャター幕の回転速度が生み出される事になります。
最後にミラー駆動部組み込み時の予備力量を作り出す方法は改めた機会にしたいと思います。