修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2014.03.14【Vol.1071】
不具合が起きてしまいましたと受講生より相談され、持ち帰ってきました。
巻き上げの逆転防止機構が働かないのは、巻き上げ軸と巻き上げノブとの間(赤点線部)に隙間があるからです。
隙間の分だけ巻き上げ軸が底部(白矢印)方向に落ち込んでしまいます。
組み立て時、此処には枚数計が収まります。ですから上カバーを外した際に収めておけば症状が現れないことになります。
試しにスペーサーを追加しますと逆転防止が働きました。作業中は枚数計を収めるか、スペーサーを足すことで巻き上げ軸の落ち込みを防ぐようにします。
では、巻き上げ防止機構に付いて解説します。
調整筒・巻き上げ歯車を外します。
中間歯車を固定している逆ネジを外します。
中間歯車は下部にあるバネで浮いていますから、取り付けの際バネを変形させないよう注意し、脇から差し込み固定します。何故浮いているかですね!
巻き上げると中間歯車を介して先幕掛かり歯車が回ります。
先幕掛かり歯車の下部には後幕掛かり歯車を回す突起があります。
両幕が巻かれた時点で係止されるのです。
レリーズをしますと中間歯車が押され、先幕掛かり歯車との咬合が外れます。
尚もレリーズを押し込みますと先幕掛かり歯車を係止しているレバーが逃げて幕が走り始めます。
3本のネジを外し、軸受けを分離します。
巻き上げ軸にフリクションバネが取り付けられています。
フリクションバネの突起が軸受けの凹みに咬合するとフリクションバネが働きます。
フリクションバネの作用は、順方向では働きません。逆方向に力が掛かりますとバネが締まり作用します。
結果として巻き上げ軸が底部に落ち込んだ分軸受けからフリクションバネが外れた訳ですね!
組み立て時、巻き上げ軸を回転させ、軸受け部の凹みにフリクションバネの突起が咬合しているのを確認してから枚数計他を取り付けます。
着せ替えをしたライカC型の擬皮を黒に替えて貰えないかと相談を受けました。
現役時代は補修部品が手に入り不便を感じませんでした。でも時代物の擬皮は経年変化で硬化しており、剥がせばボロボロになってしまいます。型紙を作り、張り替えが面倒な作業でした。更に二眼レフは形状から面倒でもありました。
又、バルナック型も同様で一枚仕様で吊り金具や低速ダイアル等があり寸法出しに苦労します。
最初に背面の突起を穴開けポンチで抜き位置決めをします。
底蓋のフック部を合わせて切り抜きます。
唯一の救いは吊り金具が取り付けられていなかったことです。
ここからが大事です。擬皮にズレを起こさないよう一部を仮接着して前面にある4本のネジ位置を決めます。
最後はレンズマウントの弧を切り取れば完成です。
レンズ交換が出来る銀塩写真機の楽しみを増やしましたライカC型。
1930~1933年の間に製造されたと申しますから、兄さん的存在です。
種種の焦点距離レンズが使えるようにマウント面からフィルム面までを28.8mmと統一し銀塩写真機の牙城を築き上げた記念すべき写真機でした。