修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2014.03.28【Vol.1076】
講師は辛いですね!池袋東武カルチュア教室の受講生より相談を受け、持ち帰り、完成した勇姿です。
固定釦が欠落しており、持病か?生産上の問題か?保存環境下か?で白濁しました50mm1.8Lマウントレンズより移植しました。仕様に若干差違が見られますが、無いよりはましなのでは無いでしょうか!では、順次腑分けを致していきましょう。
前群レンズは簡単に鏡筒から分離できました。
2本の絞り値作動軸ネジを抜き去りますと絞り値環が外れました。
経年変化と汚れで絞り値環の動作に違和感があります。溶剤で綺麗に拭います。
絞り値環は鏡筒に収まってグリスの性質により感触が左右されます。
柔らかくてもいけませんし、固くてもいけません。又、経年分離してしまうようなグリスでは鏡筒が汚れるのと、絞り羽根に油分の湿潤を招きます。
選んだのはパピルス社製のPOWER GREENでした。
絞り値カム環を外せば絞り羽根の清掃が出来る、直し手としては歓迎する仕様ですね!
剣先ネジ(赤○部)を外しますとバヨネット環・ガイド環、そして後群レンズを外すことが出来ました。
鏡筒部とヘリコイド部を分離し、化粧環を外します。
ヘリコイド部には鏡筒の出し入れを滑らかにするにフエルトが貼られています。
鏡筒を抜くとフエルトが起き出してしまうので収めるのが面倒です。
以前、沈銅用の誘引筒を作成しましたが寸法違いで役に立たず。作成するにも制約有りの仕様で匠を探すのが大変です。
(1)~(3)のネジを外します。
直進キー&回転制限環を外します。
中ヘリコイドが赤矢印側(時計方向)に僅かに動いたところで終端位置(右下レイヤー画像参照)になりました。
中ヘリコイドと内ヘリコイドは線条が切られて無く滑空仕様です。
内ヘリコイドは締め付け環で締め付けしてあるですが、締め付け環が緩まないよう打痕(赤○部)がしてありました。
出来ればグリスを入れ替えたいのです。曲げた金属を起こすのは剣呑ですのでこのままと致しました。
勤め人、退職しますとただの人となります。一番の辛さと申しましょうか?デフレ時代であっても高い交通費を全額負担することですね!
又、講座用の材料の入手先です。これは結構閉鎖的で一般人に耳を傾ける企業は皆無となります。
ダメもとで僅かな情報を元にWeb検索しますと製造元が判明しました。事前連絡では断れると直に訪問しますと、親切に相談に乗っていただけ販社を紹介頂きました。
とな訳で自宅―八丁堀―宝町―六郷土手―徒歩と出向きヘリコイド用グリスを分けて頂きました。容量は1Kg。隠居人の歳では使い切れませんね!