修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2014.05.09【Vol.1094】
油分の湿潤で絞り羽根が変形しています。絞り値環を無闇に動かしますと、より破損につながります。絞り値環を動かさないよう注意しながら締付環をはずします。
赤○部の剣先ネジを外し、前群レンズを分離します。
現状のまま絞り値作動軸を外します。
クリック板を外し、鋼球を保管しておきます。
Cリングの一端を溝から外し、回転させながら外しますと絞り値環を外すことが出来ます。
外しました絞り値環と鏡筒の咬合面を清掃し、新たなグリスを塗布します。
Cリングを外します。
分離した絞り羽根2枚に変形が見られました。
真ん中が括れていますので力が一点に集中する仕様ですね!もう少しで損傷になるところでした。
変形した絞り羽根の修正には竹串を利用します。金属を使用しますと傷の恐れがあると共に伸びてしまう危険性があります。ですから金属より柔らかい竹串を利用します。
左が修正前。右が修正後です。各々の絞り羽根を洗浄して組み入れます。
ヘリコイドの回転にムラがあるようです。
距離環を分離します。
4本のネジを外しますと距離作動環・距離指標環が外れます。
押さえ環を外しますと滑空仕様の外ヘリコイドから中・内ヘリコイドが分離できます。
組み込みの際は内ヘリコイドの直進キー溝へ外ヘリコイドに取り付けられている直進キーを咬合させます。
内ヘリコイドは中ヘリコイドの前部・後部のどちらの方向にも外れてしまいます。
ですので組み込み時の目安となる終端位置の確認が出来ません。
このような場合は金床を利用します。中ヘリコイドを跨ぐように金床を置きます。
その後、内ヘリコイドを手前側に繰り出しますと金床が邪魔をして中ヘリコイド面と水平になります。何度か内ヘリコイドの繰り出しをした後、両者に罫書き線(赤点線部)を入れます。
罫書き線を引きましたら分離し、洗浄し、新たなグリスを塗布して組み込みます。
先日、カメラ修理同好会の席で直進ヘリコイドの理屈を説明しました。
それには外・中・内ヘリコイドの三者が必要となり、組み込んだだだけでは回転ヘリコイドです。
外ヘリコイドはカメラ本体に取り付ける仕様ですね!ですから回転しません。
中ヘリコイドを回転させると、内ヘリコイドも一緒に回転します。内ヘリコイドの回転運動を直進運動に変える役割が直進キーなのです。
例えますと水の流れになります。水の流れる方向が回転運動です。
流れている水に板で遮りますと水は左右に分かれて流れて行きますね!この流れを直進運動と理解ください。この流れを遮りましたのが直進キーに当たります。
直進キーにより遮られた内ヘリコイドは回転しようとしますが、直進キーで遮られていますので押し出される様、直進キーに沿って前後の直線運動に変換されるのです。