修理人たぐちの徒然日記コラム・ギャラリー
2013.09.20【Vol.1000】
目の前に現れたのは黒塗装のペンSであった!!オリジナルか??長いこと携わってきた修理人生ではあるが、初めて出会う隠居人であった。疑問は後塗りか?オリジナルか?である。高い代価?を支払った後塗りであれば当然保存箱の中ですよね! 外観を観察すれば使用感が見られる。画像は右側の吊金具部、塗装の摩耗が見られます。
左側の吊金具部は打痕が見られ、同じく塗装の摩耗が見られます。
裏蓋部にも塗装の摩耗が見られますね!
後塗は焼き付け塗装になりますから、枚数計窓を外さなければなりません。エポキシ接着剤の状態を確認しますと製造時のままと見受けます。
クロームメッキを剥がすには化学処理をしなければならず内面に腐食痕が残ります。腐食痕は見られませんでした。
ロゴの沈塗料は綺麗です。
軍艦部の塗装は?とアクセサリーシューを外してみました。
裏蓋底部のリベットはオリジナルの特徴がありました。
内側の露光防止の塗料は一度塗りでした。後塗りであれば、何らかの痕跡が残ったものと思います。(露光防止のモルトプレーンは貼り替えました)
秒時環の溝には使用歴を物語る汚れと腐食が見られます。
薬品処理をしますと往年の輝きを取り戻したのです。
主訴はセクター完全に閉じず。でした。油分の経年変化が原因か?
全ての部品を外し洗浄致します。シャター羽根開閉環の収まる溝部に二硫化モリブデン粉を塗布することで摩擦係数を軽減します。
主訴の原因は返しバネの変形にありました。変形した事でシャター羽根開閉環を閉じる方向の力量が足らなかったのです。修正すると完全に閉じました。
問題はファインダーの汚れですね!特に対物レンズはエポキシ接着剤を使用していますので溶剤がありません。又、ブライトフレームの接着が用をなしていない場合がありますので事前にジェル瞬間接着剤で止めておきます。
カッターで少しずつ接着剤を削り落していきます。此処で急ぎますと対物レンズの損傷に繋がります。出来れば対物レンズを外したくはありませんね!
全ての作業が終わり蘇りましたペンS黒塗装。ペンWの塗装と比べますと品質の良い塗装に替わっていますね!
此の民具ペンS黒塗装仕様は販売品では無く報道機関向けに製造されたようです。
報道用ですから塗料も堅牢性を求めたものと推測します。
となると、販売機種のペンWも希少ですが、ペンS黒塗装はそれ以上の幻の機種と言えましょう。又、ペン収集家にとって垂涎の機種ですね!