種清豊のフォトコラムコラム・ギャラリー
2013.11.01【Vol.140】
最後まで生産された外式リバーサルフィルムであるコダクローム。2009年に生産が完全に打ち切られ、その後1年間ほど現像処理の猶予はありましたが、今では完全に姿を消してしまったフィルムです。1935年に映画用16mmフィルムとして発売がスタートしたコダクロームは翌年には35mm、8mmとフォーマットが拡張されていきます。カラー写真の歴史は古く、1930年代までは一度の撮影でカラー写真が得られるオートクロームという感光材料によるカラー撮影が一般的には可能でした。ただし、感光度が大変低く基本的に日中屋外での撮影に限られ、動くものはブレしまいました。
一方コダクローム発表当初、今の感度でISO10、オートクロムに比べ何倍も感度が高くと、例えば日中晴天屋外でおよそ1/60 F2.8程度の露出を得ることができました。リバーサルフィルムは、白黒、カラーともに現在でも映画用から写真用まで生産されています。明暗が逆転している「ネガ」像ではなく、明暗が反転していない陽画「ポジ」像が得られるので、単純にポジもしくはポジフィルムとも呼ばれています。リバーサルフィルムの1種類であったコダクロームは現在発売されているリバーサルフィルムと現像方法が異なっていました。コダクロームが発売されたあと、複数のフィルムメーカーからもコダクロームと同様の「外式」と呼ばれるフィルムが生産されていますが、結果として「外式」タイプ専用の現像方法による処理が必要なフィルムは前述のコダクロームのみになっていきます。
先ほどから出ている「外式」に対して現在のリバーサルフィルムは「内式」と呼ばれるタイプのフィルムです。シンプルに言えば、現像時に色を後(外)から着色してカラー像を得る「外式」、あらかじめフィルム層に青、赤、黄の色カプラーを持っている「内式」に分かれます。現像処理が比較的簡単に行える「内式」フィルムが今日では主流になったわけですが、色カプラー層を含むことによるフィルムの厚みがない分、コダクロームはフィルムが薄く鮮鋭度が高くシャープとも言われています。
また、特筆すべきことは、経年による退色が「内式」タイプのフィルムに比べ極端に少ないということもわかっています。フィルムを保管する環境にもよりますが、1936年当時に作られたフィルムや第二次世界大戦時に撮影されたコダクロームによるカラー写真など、現代に撮影されたかのように驚くほど鮮やかに残っています。私自身もコダクロームで撮影した写真がたくさんあります。フィルム代と現像料金が割高でしたので学生とっては痛い出費でしたが、今になってみれば、この先何十年も鮮やかなカラー画像を残してくれるコダクロームに感謝するときが訪れるのかもしれません。