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2016.07.01【Vol.276】

クラシックカメラ話「フォクトレンダービトーIII (Voigtlaender VITO III)」

フォクトレンダービトーIII (Voigtlaender VITO III)

世界最古とも言われた光学機器メーカーのフォクトレンダー。オーストリアで創業しドイツに移り戦前から戦後1970年代までカメラを作ったメーカーです。35mmカメラから中判カメラまで沢山のカメラを作りましたが、特に戦後になってからは35mmカメラを数多く手がけました。

ビトーIIIは、フォクトレンダーが戦前から生産を続けてきた蛇腹を使用した折りたたみ式35mmコンパクトカメラシリーズの一つで1950年から1954年にかけて約16,000台が作られました。

前に倒れるように開く前蓋を開ければ蛇腹が伸びてレンズシャッターが出てきます。左右対称の均整のとれたボディーデザインで、金属製のためか蛇腹が付いていますが、古さは感じません。またフォクトレンダーのカメラに多くみられる金属メッキの美しさもその魅力を引き立てます。

搭載レンズは当時開発されたばかりの5群6枚構成、ウルトロン50mm/F2を採用しています。シャッターは最高1/500までのシャッター速度が設定可能なコンパーラピッドもしくはシンクロコンパー(00番)が搭載されています。また、ビトーシリーズとしては初めて連動距離計が搭載されました。倍率0.5倍、基線長40mmと少し見えにくい距離計ではありますがファインダー一眼式になっています。

なお、レンズ交換が可能な、最上位機種35mmカメラ、プロミネントの姉妹機として作られたビトーIIIですが、機能面もプロミネント同様ピント調節はレンズ側ではなく、ボディに搭載されたフィルム巻き戻しノブを使って行います。距離計連動とはいえ、カメラのフォールディングを犠牲にした作りで、使い勝手がいいとはいえませんし、折りたたみ式でコンパクトなはずの35mmカメラも650gの重量になってしまい、決して軽いとはいえません。

当時最新の「ウルトロン」というレンズが使えるということが売りの一つだったとは思いますが、レンズ交換もできず、アクセサリー類も少なく、折りたたみカメラのとしての軽快さというメリットがなくなったビトーIII。プロミネント同様の機能によっていたずらにコストを増大させてしまい約16,000台という生産数から見てわかるとおり、あまり売れたカメラではなったようです。

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